▼ 2
「…あれ……?」
廊下を歩いていると、見慣れない顔つきの生徒に出会した。
艶やかな髪に、今迄出会った女とは違う異様な色気、艶やかさ、純潔。華奢な体は今にも折れそうで、端正な顔立ちはまるで人間とは思えぬほどに綺麗だった。
この学校にこんな子いたっけ。
「…美人でしょ、ハイドちゃん」
「うわっ!…いきなり現れるのやめろよ、ラスト」
「何よ。知りたそうな顔してたから教えてあげたのに」
ラストは長い黒髪を指で掬いながら、小さくため息をついた。
彼女も吸血鬼で、この学校の教師として生活している。
女の吸血鬼でも、処女の血が好物らしい。
ライバルとまではいかないけど、どちらがどれだけ生徒を落とせるか、なんて勝負をしたことがあったっけ。
「ふーん…あの子、ハイドって名前なんだ」
「確か倫理学を中心に専攻してるわ」
「へぇ……ちょっと興味わいてきたかも」
本当はちょっとどころじゃないんだけど。
頭の中では既にどう食べてしまおうか、なんてシュミレーションが行われてたり。
「じゃ、あの子が今日のご馳走だね」
「あ、ちょっとエンヴィー…」
ラストの声を背に、ハイドに近付く。
後ろから声をかけると、振り向いた端正な顔と目が合う。
「ハイドちゃん、だよね。確か倫理学を専攻してる…」
目を合わせたままこくりと頷く姿が愛らしい。
「…先生が特別に、勉強教えてあげるよ…?」
催眠を込めた眼力でハイドを見つめる。
紅く染まった頬に、惚けたような虚ろな瞳。
落ちたな、と確信する。
「それじゃ、先生の部屋に行こうか…」
ハイドの細い肩に手を回し、そのまま部屋へと歩く。
彼女の端正な顔が快楽に歪む瞬間を想像しながら。
prev / next