moment




メランコリーは罪に囚われ過ぎていた。
故に自らを殺し、贖罪を完成させた。



あの時ーー、

突き立てたナイフは彼女自身の喉を抉り、噴き出す血の臭いが目眩を誘った。
肉体は再び構築され、しかしその度にまた自らの喉を裂く。
メランコリーの瞳には、うっすらと涙が浮かんでいた。
それに気付いた途端、何故か抗い様のない不安が脳内を駆け巡った。

「ーーっメランコリー!!」

ナイフを握る手を掴もうと手を伸ばした。その瞬間、メランコリーと目があった。

「ーーーー……」

触れた筈の彼女の手が崩れ落ちた。

そしてゆっくりと溶ける様に、メランコリーは跡形も無くーー……










「うそ、だ……そんな……」

腕の力が抜けた。
頭の中が真っ白になる程の、衝撃。

彼女のうなじには、確かにウロボロスの刻印が存在していた。






…………







背中に加わっていた圧力から解放されると、再び少年と目が合った。
少年は惚けたように焦点の定まらない目をしていて、何事かを呟いていた。

「ーーあの、貴方は…」

声を発すると、少年はハッとして私に向き直った。

「……お前、記憶が無いのか」

彼はそう言って私に近づくと、強い力で私の腕を掴んだ。

「っーー、私、は」

「……生きてた、のか……」

返事をする間も無く、頚椎に何か強い衝撃を感じた。
意識が遠のく中、最後に見た彼の表情は、悲哀に満ちていてーー何故かその光景を、懐かしく思った。







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