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よく晴れた日だった。
遠くの方で礼拝堂に入っていくロゼの後ろ姿を見て、暇つぶしがてら話しにでも行こうかと、彼女の後を追った。 扉を少し開けたところで、彼女の怒声が耳に飛び込んできた。
「人は物じゃありません!創造主への冒涜です!天罰がくだりますよ!!」
ロゼと向かい合わせてそこに居るのは、赤い服を纏った小柄な少年と、やけに大きな鎧を着た人物。どちらも見たことのない容姿である。旅行者、だろうか。
私は彼らに気付かれないよう、静かに扉を閉めた。
(天罰…か)
「外の様子はどうだったかね」
コーネロの部屋。くつろいでいる彼の机に信者達からの寄付金を置いた。
「見慣れない者が居ました。恐らくは旅行者かと」
「そうか」
コーネロの部屋を出ると、入れ違いで側近のクレイが部屋に入っていった。
「教主、面会を求める者が来ております」
「子供と鎧を着た二人組で、エルリック兄弟と名乗っていますが…」
子供と鎧を着た二人組、という言葉に、礼拝堂で見た二人組の姿を思い出す。 ロゼが怒鳴っていた人物。 彼の部屋の前で足を止め、暫く彼らの話し声を聞いていた。
「まずいことになった!…鋼の錬金術師、エドワード・エルリックだ!」
エドワード・エルリック。確か、史上最年少国家錬金術師と云う少年。 あの小柄な少年が、国家資格を持つ錬金術師だったのか。
(創造主への冒涜です!天罰がくだりますよ!!)
あの時少年は、ロゼに何を語ったのだろう。
「その国家錬金術師がなぜここに!?まさか我々の計画が…」
いつになく慌てるコーネロの声を背に、私は自室へと足を向ける。
二人の兄弟の訪問が、偽りの神の正体を暴くことになろうとは、この時の私には想像すらできなかった。
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