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ーこの地上に生ける神の子らよ
祈り信じよ、されば救われん
太陽の神レトは、汝らの足元を照らす
見よ、主はその御座から降って来られ、汝らをその諸々の罪から救う








なんて甘美な誘い文句。







ー生きる者には不滅の魂を、死せる者には復活を







"奇跡の業"とやらは、こんな御大層な力を持っているらしい。







ー祈り信じよ、さすれば汝が願い成就せり







神に縋るのは愚かな人間。

彼らも私も変わりはしない。

それでも私は幸せだった。




例え偽りの神だとしても




























私の名を誰かが呼んでいる。
振り向くと、哀しそうな顔立ちの美しい少女が私を見つめていた。

「どうしました?」

「貴方が、ーー奇跡の業で蘇った、というのは、本当なのですか?」

私の返事を待つ少女の後ろで、"教主様"がニヤリと笑った。

「ーーそうですよ。"奇跡の業"で、ね」

そう言うと少女は目を輝かせて、"教主様"に向き直った。

「教主様!」

「いい子だ、ロゼ。こうして毎日神のために尽くした人間は、奇跡の業で蘇ることができるのだよ」

少女の瞳には涙が浮かんでいた。小さく震える唇から吐き出される言葉は、あまりにも純粋で

「これで……あの人も……」

"生きる者には不滅の魂を、死せる者には復活を"
例え偽りの言葉でも、こうして喜ぶ者がいるのなら。
…それだけで十分だったのだ。






















「ふはは、うまくいったなぁ」

少女が去った後、"教主様"の部屋で二人、向き合って座る。

「上手く騙されおって小娘が。あれがこのことを皆に言いふらせば"奇跡の業"の信憑性も高まるわけよ」

彼の太い指に嵌められた赤い指輪がキラリと光った。

「助かるよ、お前のその容姿は、なんとも語りやすくて便利だ」

くつくつと低い声で笑うその姿は"教主様"の顔ではない。権力を持ち欲に目が眩んだ愚かな人間ーーコーネロそのものの本性であった。

「もう暫くは私の計画に付き合ってもらうぞ」

ーそうでなければお前は、受け容れられる場所などないのだから
彼の言葉に含まれる意味など、考えなくともわかるのだ。
























「教主様、ありがとう!」

そう言って無邪気に手を振る少年と、その母親。その手には"奇跡の業"で生み出された薔薇の花束。

「君にもレト神のご加護がありますように」

慈悲深く笑みを浮かべる教主様は、町の人皆が尊敬する神の代理人。

例えそれが偽りの姿だとしても、人々は信じているのだ。

神の御業を、人々の安寧を。























「…彼女の存在、それこそが神のお力の表れなのです」

修道服のベールを取り、素顔を晒すと、人々が私の姿を見、驚き、そして畏敬の眼差しを向ける。
老いも記憶も色彩も何もかもを持たない私の姿を、"神の代理人"である"教主様"は、

贖罪のアルビノ と、そう呼んだ。









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