▼ 危機 2




ホムンクルスの存在を嗅ぎ回る組織がある

しかも、軍内部に




国家機密の最大規模である我々の存在を知る人間は、軍の上層部ーーその内のごく少数な筈であった。
しかし、何人かの研究員ーー主に賢者の石を扱う人々が、噂を聞き、或いは存在を疑い、組織立って我々を捕獲しようと企み始めた。
もちろんこの事は、直ぐに上層部に伝わった。
私たちも知っていた。
その計画を阻止する方法など幾らでもあった。
しかし、彼らには正当な理由がある。
私たちは計画に気付いた人間を、それがどの様な地位であれ抹殺してきた。
軍の人間も研究員も、容赦なくーー









ざらざらとした壁を右手に伝って、ゆっくりと歩みを進める。
私は迷いなく、彼らに近付いて行く。

私に気付いた一人の人間が、銃を構えて吼えた。

「貴様!!動くな!!!」

「……私、ですか」

ずるりとその場にへたり込む。
大丈夫、上手くやれる。
今の私は、危険地帯に迷い込んだ非力な少女だ。

「……?人間、か…」

ざっと十五人くらいだろうか。
背の高い一人の男が、私に歩み寄った。

「危ないですよ、そいつ、ホムンクルスかもーー」

「解っている。今からそれを確かめる」

男は私の二歩手前で歩みを止め、じっとりと舐める様に視線を絡ませた。

「貴様、如何してここへ来た」

「あの…この近くを通っていたら…ここで大きな音がしたので、…どうしたのかと、様子を…」

「ここは立ち入り禁止の筈だが?」

冷や汗が流れる。
しかし表情は変えない。

「そうでしたか?私、よくわからなくてーー…」

ーーガシャ、と音がした。
私の後方だ。
すかさず身構えたのは私だけではない。
目の前の人間たちは既に銃口を向けていた。
エンヴィーは、うまく逃げられるだろうか。

「ーーホムンクルスかどうか、確かめる方法ならある」

そう言うと男は、私の手首を引っ張った。
無理矢理立たされる様な状態になり、私はバランスを崩す。
その瞬間、はら、と髪が舞った。
足元に落ちた私の髪束は灰の様に散り、ぱちぱちと光を帯びて髪は元の状態に戻る。
しまった。そう思った時には既に、銃口は額に突き付けられていた。











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