▼ つっこみどころまんさい
「ラスト、グリード、お食事の支度ができました」
「おお」
「今行くわ」
「エンヴィーはまだ仕事でしょうか」
「いや、もう帰ってるはずだけど…」
食卓には四人分の料理と、シルバーの食器が並べられている。
メランコリーはいつも正確な時間に食事を用意するから、地下でも時間感覚がズレたりはしない。献立にも拘りがあるらしく、一品たりとも料理が前日と被るなんてことは無い。その徹底された几帳面さに、内心感心すら覚える。
「うわーまたにんじんスープ?」
末弟のエンヴィーは遅れて来たにも関わらず、彼女の行為を一切顧みない不躾な発言をする。
「最後に出したのは三日前だけど」
「たった三日じゃん、ローテーション早いって」
「にんじんが嫌いだからって文句言わないでよ」
「別に嫌いじゃないし?」
黙って食べれば良いものを。エンヴィーの軽口にわざわざ返事をするメランコリーもメランコリー。ただ律儀なだけか?
「俺ぁこのスープ美味いと思うんだけどな」
なんとなく思ったことを口にしてみる。妹弟の視線が同時にこちらを向き、その光景を遠目に見ていたラストが堪えきれずに吹き出した。
「ちょっと……どうして笑うんですか…?」
「あのさーすっごくどうでもいいんだけど…」
「どうでもいいなら話すなよ」
「いや聞けよ」
「わかったわかった」
「どうしてメランコリーはラストに対して敬語なの?」
本当にすごくどうでもいい。
「私はグリードにも敬語使ってるよ」
メランコリーは律儀に返事を返す。疑問への答えにはなっていない。
「じゃあ何でこのエンヴィーには敬語を遣わないのさ」
輪をかけてうざったい質問。何だこいつ。末っ子だとしても可愛くねーわ。
「だってエンヴィーは年下でしょ、妹に敬語は使わないよ」
メランコリーがさらに追い打ちをかける。メランコリー、それは狙って言ってるのか、それとも真面目に言ってるのか、普段通りの真顔で言われても見分けらんねーよ。
確かにエンヴィーは男か女か微妙な見た目してるけど。
「は?お前このエンヴィーのこと妹だって思ってたの?」
再びラストが吹き出す。
……咳払いと見せかけるにも限界があるから。肩震えてるし。
「じゃあ何だって言うのよ!」
「お前のこと姉だって思ったことなんか一度もねーよ!!」
「な、なにをー!!」
(……そっちか。)
ぎゃんぎゃんと言い争いを始めた妹弟たちを余所に、ラストと思い(ツッコミ)がシンクロした気がした。
END
prev / next
[ ← ]