腿:支配:タケルと魔女さま


 名を与えることは与えた相手に支配されることだと、昔に教わった。そういうものか、と思っていたし、誰にも教えずに守り続けてもきた。けれど私は、だからこそ。名を与えること、それ以上に私を支配する方法はないのだと、そう思っていたのかもしれない。
 ようは、名前を教えること以外に、恐れるものはないのだと。
「貴女が、好きだ。ヴィヴィ」
 撤回せざるをえないのかもしれない。支配力を持つのは名前だけではない。
 名も、手も、声も、眼差しも、すべては魔術に変わることを知った。私に入り込み、形をなくし、ゆるやかに浸透する形式のない魔術よ、支配をしないで。そんな言葉は、とっくに手遅れになっている。
 なぜなら最高に私を戒めているものは、この人が好きだという、私自身の恋、それ自体なのだから。恋に名を捧げ、手を取り、心を明け渡した。ああこれではまるで、魔女というより。
(塔の姫、とか? キャラでもないけど)
 幸福で身を滅ぼす覚悟をする日が来るとは思わなかったな、と、大腿に触れる唇の冷たさに心臓を揺らがせながら笑った。名のない魔女はもういない。貴方に出会って、私は変わってしまった。
 たぶん、私たちのようなものにとっては、変わらないことではなく、変わることを支配という。
 いつか貴方の生が終わるとき、そこにいる私は今よりもずっと、別人のように変貌しているだろうけれど。それは目に見えない変化だから、この恋と一緒に、貴方だけが永劫に掴んで、いって。



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