煙絵


 真実にぴったりと嵌る、蓋を探し続けている。そんなものはないと散々暴いてきた人生の、中腹までやってきておいて。暴かれる側になって初めて、どんなに恐ろしいものかを知った。例えそれが、罪というような罪ではなくとも。
「センゴクさん、こんにちは」
「ああ……、リオちゃんか。ははっ、元気そうだね」
「センゴクさんは?」
「俺かい? そうだねえ、今やっと目が覚めたところかな」
「ええ?」
 まったくもう、お昼ですよ、と。困惑したように向けられる声が可笑しくて、もう少し困らせてみたくて。
「君に、会えたからね」
 なんて、そんな戯れに似た目眩ましの下で口にした言葉は、はたしてどこまで戯れだっただろう。
 濁した数だけ匂い立つ、真実をあとどれくらい、隠せるだろう。俺自身に、傍観者に、交わす声に。そして何より平凡で非凡で、ありふれて特別な、彼女に。


(センゴクとリオ)



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