―――母になる君の腹に手を当てて、おめでとうと笑ったとき。


 それはあまりにも微かな痛みで、針の先で突いた程度のものだったから、本当に気づくことができなかった。彼女が町の青年と、教会で仲睦まじく寄り添ったときでさえ。まだ私には、私の奥にある芽吹かぬまま枯れた感情の存在に気づくことができずにいたのだ。すべてが遅く、あまりにも穏やかに、目を向けたときには終わっていた。
「身体は、ちゃんと労っているかい」
「はい」
 微笑んだ彼女に、そうか、と返してその膨らんだ腹から手を離す。
 母になる君は、とても美しい。そして、幸せそうだ。浅い恋だった私にとっては、それだけで満たされる理由になる。
 尚も胸を刺す針に告ぐ。お前が私に穴を開けたとして、この身から溢れかえるものなど、とうに喜びと祝福だけだ。そういう恋だったことが、私にとっての彼女を愛した軌跡なのだ、と。


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