Blue


 碧空であるとか深海であるとか蒼穹であるとか、とにかく何だっていい。遠くにあって掴みきれないほどの何か大きな青に沈みたい衝動に駆られていた。理由はきっといつものことでふいに自信をなくしたとか、けれどそんなことには気づかないふりをしないと生きられないとか、けれどやはり後ろを向くことが許されるほどの生まれや育ちでもないのだからすべては自業自得だとか。そんなことが絡み絡まって縺れに縺れた結果の、神経が柄にもなくきりきりと擦れ合うような消耗感。そんなものを、何でもいい、何かあまりに小さなことに思わせてくれるものに思いっきり浸りたくて、両足が波を被る砂浜に寝転んで目を閉じる。空は青い。海も青い。みんなみんな青い。それでも何か足りない気がしてしまうのだから、結局は掴めそうで掴めないものと見せかけて不可能でもない何かを求めているのだろうか。夢想家め、と鼻で笑った我が身の背中は夢でも何でもない真夏に焼かれた砂に抱かれてひりひりと熱い。とてつもない青を頂戴。そんなあやふやな願いを、誰が聞き届けたっていうのだろう。
「……何してるの、カイ」
「え?」
「それ以上日に焼けたら、あとで痛くなるわよ」
嗚呼、溺れた。ようやくこれで、息ができる。

カイとクレア



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