Citrine


 馬鹿な子だねと言ったのに、こんなにもはっきりと言ったのに。どうやら僕の忠告は彼女には意味を成さなかったようだ。天性の馬鹿なのかもしれないと、ここまでくると呆れだとか笑いだとか、そんなものもすべて超えてしまう。
「……何、本気なの?」
「当たり前じゃん。いいよ?」
シナモン色の髪をくしゃりと跳ねさせて上機嫌に首を傾げ、太陽のような笑顔で彼女は言った。
「結婚しよう。私、チハヤのこと絶対幸せにするから!」
僕の中にはもはや彼女に突きつける失笑も冷笑も残っていない。あとにあるのはただ、そんなものより本当はずっと甘くない感情ばかりだ。縋るように抱き締めた肩の細さに、喉が引き攣れるような熱が込み上げる。馬鹿だね、僕なんかに本気になって。そう言ったとき、生まれて初めて誰かを傷つけることが恐ろしいと思った。

チハヤとアカリ



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