Wheel


 車輪の上を歩く僕らはどこへ向かってゆくのだろう。振り返れば短くもない距離を進んできた気がするけれど、なんだか霧が濃くて思い出は有耶無耶だ。立ち止まったら倒れてしまうから、また仕方なく車輪の上、足を動かす右左と。軋んでいるのは車輪だと、疑いを持ったらやはり倒れてしまうからそれは考えないようにして。
「―――……、クレア、さん?」
「あ、クリフ。良かった、目が覚めた?」
「ここ……?」
「病院だよ。憶えてる?私と広場で会って、倒れたの」
「……、ああ、そういえば僕……」
「ああ、大丈夫。起きなくていいよ。それとね、これ」
「?」
「……拾ったから、ごめん。ちょっと見えちゃったんだけど。……大事な写真でしょ?」
「……ああ、良かった。クレアさんが、拾ってくれたんだ。……ありがとう、本当に」
「うん」
どこまで、どこへ。終わりも見えず始まりさえ今となっては不確かな路を、なぜ歩いてしまうのだろう。答えは一つ。今はただ、そこしか路が見えないから。
 雪の名残が端に残った写真へ一滴、雨が落ちる。世界は未だ解けない。僕らは足を休める術を、知らない。

クリフとクレア



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