Vanilla


 感傷を引き摺り続けるといつかそれは甘い氷のような、冷ややかで美しいものになれるらしい。そんないつどこで読んだのか聞いたのか、そもそも何かの受け売りであったのかすら記憶に怪しい言葉を信じて初恋を抱いたまま死ぬのもいいか。そんなふうに考えていた時期もあったのだと言ったら、今の彼女は何と言うだろうか。馬鹿なこと言わないでと仕方ない男を見る目で見ながら、結構本気で心配してくれたりなんかして。それからきっと、少し沈黙があって言うのだ。
「ねえ、コトミ」
「なあに?」
あのね、ジュリちゃん。
「アタシね、昔、コトミに意地悪ばっかり言って嫌われてた頃―――……」
初恋は、叶ってるんだから。もうそんなこと、言うのやめてよ。
 すべて本当は、きっとそう。滅多に愛の告白なんて口にしてくれない彼女から、そんな控えめな台詞がただ少し、聞きたくて。私のそんな我が儘が現実のものとして叶うのは、このすぐ後のこと。

ジュリとコトミ



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