Rainless


 どうやらとことん愛に飢えているらしい、と結論づけざるを得ない。そうでもなければもっと、何かいい着地点を見つけることもできたはずだ。私だって、何も普段から常々こうなわけではないというところを理解してもらいたいのだが、この男はそこのところ分かっているのだろうか。分からないほど洞察力に欠けるとも思ってはいないのだが分かっていてこんな惚けた顔をしているとしたらつくづく性悪だし、分かっていないとしたら恐らく次に会うときは別れ話だろう。私だって、こんな女嫌だ。
「キスしてって言ったのよ。聞こえなかった?」
「おい、リオ。どうしたんだよ」
「さあね。……貴方が言ったんじゃない。愛情表現の分かりにくいのは嫌だって」
「……は?」
「もういい。私がするから」
事情を理解しかけたような、それでいてまだ困惑の覚めきっていない彼を美容院の柔らかな椅子に押し込み、肘掛に手をついてキスをする。思ったより距離があって膝を借りる形になったのが若干悔しいけれど、日頃私にキスをしたがるアレンの気持ちが少し分かった気がして、これはこれでいいかとも思った。情熱なんて、求めるほうが悪いのだ。精々たまにはそうして、自分の言動を悔いてみればいい。まあもっとも、彼は彼で楽しげな顔をしているので、後悔なんて結局してやくれないのだろうが。
 どうやらとことん愛に飢えているらしい、と結論づけざるを得ない。そうでもなければもっと、何かいい着地点を見つけることもできたはずだ。そもそも彼を選ばなくたって、良かったはずだ。それなのにこんな情熱家の自信家にふらりと落ちてしまう辺り、私も存外熱病的で、上手く噛み合う女なのかもしれないと思った。

リオとアレン



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