Quake


 釣りをしましょうと誘ってくれたのは隣のひとだった気がするのだけれど、その隣のひとは今やシナモン色の頭を私の肩へ載せて、うつらうつらと危なっかしく微睡んでいるものだから可笑しい。話ができないから声が聞けないのは残念なことだが、実質眠られてしまったことに関しては存外、悪い気のするものでもなかった。すう、と規則正しい呼吸がこんなにも傍で聞こえる。疲れを口にしない彼女の憩いの場にでもなったような気になって、思わずその頬が片側だけ日に焼けたりしないように帽子を被せ、そっと肩を引き寄せて支えた。
「お疲れ様です、いつも」
こうして並ぶとずいぶんと小柄に思えるその身体は、微かに身じろぎをしたかと思ったが、また静かな寝息を立て始めた。私も釣竿を握り直して、せっかくなので仕事をしておくことに決める。あまり大物がかかると起こしてしまいそうで困るななどと思いながら覗いた水面は、今日も深く青く。やけに楽しそうな私をありありと映すものだから、何とも言えない気持ちになって、ふっと小さく笑った。

タオとアカリ



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