「………、」
自分とは何もかもが逆であった。
ハキハキと喋り表情も豊かで、笑顔は愛らしく年より幾分下に見え、焼けた肌は活発な印象を持たせ、笑うと笑窪が出来てちらりと八重歯が覗き、焼けた肌に薄く朱を差しながら頬を掻く、可愛らしい奴であった。
六年で一番背が小さいくせに態度だけは立花に並ぶ程大きかったが礼儀や立場を弁える、聡い奴であった。
「小平太とバレーボールをしたんだ!」
「………怪我はないか。」
「ああ!」
自分の言葉を聞き逃さず、全てに反応してくれる奴であった。
「なぁなぁちょーじ、私はい組には向いていないのか?」
「………向いていなければ、い組ではない。」
「そっか。」
自分に相談を持ち掛ける程、繊細な奴であった。
「……さよなら、だな。」
「…………嗚呼。」
死期に怯える、弱い奴であった。
「墓は学園の近くがいいなぁ。」
「………わかった。」
「、サンキュ。」
穏やかに笑う、優しい奴であった。
「……………、」
物言わぬ姿で帰ってくるような、そんな奴であった。
隔てた向こうに貴方が居るのですか?
憧れていた。自分の持たぬものを持つ奴を。
哀れんでいた。死期が迫る奴を。
妬んでいた。愛される奴を。
愛していた。太陽のような奴を。涙した。奴の恋文に。
笑った。枕の下に隠された恋文に。
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