文 | ナノ

寒いから心配して


 黒子くんを観察し始めて、はや一週間。わかったことといえば、やはりイメージ通り彼が本好きだということ。どうやら図書委員らしい。後は、意外にも授業中寝ている事が多いということだ。でも、影が薄いから先生にも気づかれないみたい。羨ましいかぎりだわ。
 そしてわかったことがもうひとつ。


「くーろこっち!!」

 彼はとてつもなくキセリョに懐かれているということ。
 キセリョこと、黄瀬涼太。キセキの世代の一員で、モデルもやっている。凄く女の子にモテる。マジでモテる。わたしは興味ないけど、私の友達にはファンが多い。ほら、今もキャーキャー言われてる。でもなんか、笑顔が営業用すぎてわたしは気にいらないのよね。まあ芸能人も大変だろうしね。
 でもそんなキセリョが、黒子くんの前ではそりゃあもう大型犬かのごとく見えない尻尾ぶんぶんふってるような錯覚さえ陥るレベルでデレているのだ。
 正直黒子くんを意識しだしてからうるさいなと思っている。黒子っち黒子っち言い過ぎ。黒子くんよく耐えてるなあと心底思ったりして。

 「黄瀬くん、うるさいです」

 訂正。黒子くんも案外容赦ない対応してるわ。全然耐えずに本人にぶつけてるわ。


 「黒子っち!今日はなんか一段と寒くなるらしいっスよ!」
 「はあ、そうなんですか。」

 うすっ!反応薄いよ黒子くん!

 「ちゃんとあったかくして帰らなくちゃいけないっスよ!黒子っちの手はオレたちにパスを回してくれる大事な手なんスからね」
 「…心配ありがとうございます。君たちにパスをちゃんと回せるように気をつけますね。」

 あ、デレた。黒子くん、バスケのことになるとわりと笑うんだよね。って、ちょっとスルーしかけたけど、キセリョ!!!
 黒子くんの手!!握ったまま!いくらなんでもベタベタしすぎじゃない…?

 …うん。まさか、ね。人懐っこいだけだよね?キセリョ、スキンシップ激しそうだし!まさか、ね。

 わたしは、一抹の不安が頭をよぎりながらも、とりあえず微笑ましく、彼らを見守っていた。

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