文 | ナノ

恋い焦がれるは面影でしょうか


 不思議なひとだった。だけど確実に彼女は存在していて、僕を救ってくれた。僕が悩み、苦しんでいたとき、彼女が光をくれたんだ。
 今はもう彼女の姿を朧げにしか思い出せないけれど、確かに彼女は存在していた。
 あの日、あの彼女がこのベンチに来なくなってしまった日から、僕が彼女を忘れてしまったら、何故か彼女の存在がなかったことになるような気がして、僕は彼女がいたという事実を何度も確認してしまう。

「夢みたいだったなあ」
 彼女はとても美しくて、大抵無表情だったけれど、気然とした態度で、媚びたりしなくて、自分をきちんと持っているような素敵なひとだった。彼女のことはなにひとつ知ることは出来なかったけれど、確かに僕は彼女を恋しいと思った。

 特別なひとだった。
 だから忘れられる訳なかった。あれから随分時が過ぎたけど、やっぱり僕は待ち続けている。

 彼女と過ごした、あのベンチで。




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空シス。好きだけど切ないですよね
キースさんは例えこの先恋愛して結婚したりしても、シスのことは、一生忘れないんだろうなあ。
title by だいすき。

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