文 | ナノ

愛されたまま死んだ彼女に、私は一生追いつけない


 我ながら不毛な恋をしていると思う。
 淡い恋心を自覚したのはつい最近のことで、(だってありえないじゃない?いくつ年離れてると思ってんのよ)だからこそ、気づいた時にはもう引き返せないところまできてた。

 馬鹿だし、弱いし、うるさいし、暑苦しいただのおじさんだけど、誰よりも純粋で、誰よりも仲間のことを大事に思ってる。もちろん私のことも。そんな彼を好きになるのは、ごく自然なことだったのかもしれない。

 けれど、これは不毛な恋。
 私や周りがいくら盛り上がったって、この気持ちが叶うことは絶対にない。なぜなら毎日、私は見せつけられているから。彼の左手の薬指に嵌められているそれによって。

 タイガーは独身だ。なぜ指輪が嵌められているのかというと答えは簡単な事で、彼の奥さんはもう此の世にはいないのである。

 普通なら、再婚だってできるし、絶対叶わない恋とはいえないのかもしれない。でも私には自信がない。否、多分誰にだって無理だと思う。なぜなら彼は、まだ彼女を深く愛しているから。ふとした時に薬指を見つめては愛おしそうな表情をする。そんなの見せられたら誰だって無理だと思うよ。

 仮にこの想いが受け入れられたとしても、愛されたまま死んだ彼女に、私は一生追いつけない。

 そんなの辛いよ

 けど、好きでいることをやめることは出来なくて結局、いつも通り、憎まれ口をたたいては可愛くない自分の姿を晒してしまうのだ。


「どうしたらいいの」
 耐え切れず吐き出した問いに応えがかえってくるはずもなく、残酷なほどの静寂に私は包まれた。



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カリーナかわゆ。虎薔薇好き、
だけど絶対二人は結ばれないですよね
title by 確かに恋だった


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