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二度目のおはようございます。


午前6時まできっちりカッチリ睡眠をとった露伴がすぐに眠りに就けるワケもなく、布団の中で散ざっぱらに説教をされながらもおれは無視して先に寝た。

(おい寝るな僕を置いていくなとかデビルマンのワンシーンを彷彿とさせるセリフを横で囁いていたけれどやっぱり無視して先に寝た)



そして携帯電話のアラームで一足先に起床したおれ(と言ってもまだ7時)は、隣で寝息を立てるガウン小僧を恨めしげに一瞥して、早々に帰路に着くことにした。





『ぜったいに許さないからな覚えておけよ……』

「珍しいな、恨み言か。」




岸辺家を後にしようと玄関扉を開いて、今朝の出来事を思い出しながら誰の耳に届くでもない言葉をこぼした。つもりだった。

思いがけず返されたその声を、聞き紛うはずもない。
おれはあんぐりと口を開いたまま目の前の彼を見上げた。




「もうホテルに戻るのか?」

『ハイ…えっ、迎えに来てくれたんですか?!あ、違うか!おれに用事??アッ、露伴に用事ですか?!アイツまだ寝て』
「落ち着け。」




そうだぞ落ち着けおれ。
いつも承太郎が現れると困惑してハイパー饒舌になるのオタクっぽくてすごく良くないぞおれ!いやそのそも毎回急にエンカウントしてくる承太郎に8割方の要因があるように思うんだけど。

ていうかさっきおれが恨み言いってるの珍しいって仰った??おれ基本的に恨み言しか吐いていないんだけど、そんなピュアに認識されてて少し心が痛むんだけど…!偽りのおれを愛してくれているの?この愛は本物なの?!




『ハァハァ……!』
「何も喋ってねえのになぜ息が切れるんだ…」

『いえ、あの、すみません…! 承太郎さん、なにゆえココに……?』



心の声が途切れるところを知らなくて思わず肩で息をし始めるおれを見て、少しだけ目を細め訝しげな表情を覗かせる。
そこで心配とかしない辺り、なんだかんだ理解されてるじゃんね偽りじゃなかったねこの愛は…




「昨日、仗助のヤツに何かしてくれたろう。」



ウワ……

でたでたでたよ先生に言ってやろう星人じゃんコワァ…
仗助が知りたいって言ったから、おれたちは真実をお伝えしたに過ぎないのに、あんまりじゃあないですかねぇ!!?

おれはスンと無表情で彼と目を合わせる。




『何を言っても信用してくれないので、異世界人ですと伝えたら逃げました。』

「どんな言い方をしたらああまで怯えるんだ…」




そんな怯えきった仗助、作中でも見たことないけど動画とか撮ってないんだろうか。

数多の敵に命を狙われる承太郎なのだから、ワンチャンホテルにカメラのひとつやふたつ設置しているのでは?!そうすれば顔面蒼白ハァハァしながら必死で甥っ子に助けを求める東方仗助さんの様子が拝め……

まて?




『あの、承太郎さん……ひとつお尋ねしたいんですけれど…』
「どうした?」


『あのホテル、防犯カメラ付いてたりするのかなーなんて…』




それって世界一ヤバい事態だ。

露伴がおれを訪ねてきてたことなんて秒でバレるじゃんていうか部屋にカメラと盗聴器くらいあったっておかしくなくないか?どんなスタンドが攻撃してくるか分からないワケじゃん絶対証拠残しといたほうがいいじゃん。

もしかして全部知ってたりするの??おれの隠し事まるっと知ったうえで素知らぬ顔をしていたりするの…?!!






「何かあったのか。」



後ろめたさがマックスで横に目線を逸らしているおれの顔を、頬に手を当てて上を向かせる。

目の前のその人は、心配していますと言わんばかりに神妙な面持ちで真っ直ぐおれを見ているのもだから罪悪感と愛しさとがぐちゃぐちゃになって、恐らくおれはものすごく苦い顔をしてしまったのだろう。

頬に当てた手がスルリとおれの後頭部へ回って、彼の肩口に引き寄せられた。





「帰って話を聞く。」
『や、ちがくて』

「守ってやれず、すまない。」



おれを抱きしめて耳許で小さく懺悔する彼に、さっきまで五分五分だった罪悪感と愛おしさも一気に罪の意識一色に。

ちがうんだって!!!水族館のときもそうだけどミョ〜に真面目に物事を受け止める節がありませんかァ?!
おれはお姫様じゃあないんだから、守ってもらう必要なんかないっていうのに、何だってそんなに過保護なのだ!お前はオスカルか?!(ベルバラは読んだことがない)



早めに弁解をしよう。
このままじゃあカメラを設置されかねないし、血眼でアバッキオみたいな能力者を探して出して来かねない…ッ!ヒィ!





「すぐに財団にカメラを手配させ」
『ないでェ?!!おれホラその廊下とか長い直線通路見るとついスキップしがちな部分あるから映ってたら恥ずかしいな!!!』



咄嗟に苦しさ満点の言い訳を放ってしまったけどなんだ直線スキップしがちって頭愉快すぎるだろおれ。
たしかに承太郎の部屋はスウィートなルームゆえに周りに部屋もないし人気も少ないから多少は!多少はそういった衝動も!ゼロではないけれど!それでもッ!

彼はゆっくりとおれから身体を離して、初めてツチノコと遭遇したようなそんな神妙な面持ちで顔を突き合わせてから、目線を左右に遣って辺りを一瞥した。





「それなりに直線だが…する、か?」

『承太郎さんも?!』
「頼まれたって御免だぜ。」
『土下座しますよ?』
「テメーの土下座に価値があると思ったら大間違いだな。」




やれやれだぜ、といつものヤツを小さく零して踵を返し歩き始める彼の隣に、そそくさと並んでおれも一緒に歩き出す。

え、帰るの?仗助の件で真偽を確認しにわざわざこんな朝っぱらからバスに乗って(いやたぶんタクシーだな)岸辺邸に来たの?







「名前。」



重たい詮索系男になるのは避けたいので、疑問を飲み込み静かにイイコチャンしているおれに一瞥もくれず、歩を進める道に顔を向けたまま名前を呼ぶ。

見ていないから存分にスキップしろってことだろうか。そんな気遣い無用なんだけれど、逆にスキップしてあげた方がいいのか…?(地獄の気遣い合戦)





「昨夜、どこに行っていた?」






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