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「昨夜、どこに行っていた?」


歩みは止めずに、なんてことないように彼は問いかけた。その表情を見上げても、いつものフラットな内心の読めないソレのままだ。




おれはというと、質問の意味がわからない。
いや、意味はわかるのだけど、意図が。さっぱり。

自分で迎えにきておいて昨夜どこにいたんだってどういうことなの?逆に露伴邸以外にいたって選択肢が存在するの??





「仗助が駆け込んできたあと一度訪ねたんだが、不在だったんでな。」

『寝てましたねソレ。』


「呼び鈴も5度は押したぜ。」
『メッチャ押す。』




そんなピンポコピンポコ鳴ってたら露伴が起きそうなものだけど、アイツも相当なノンレム睡眠の達人なんだろうか。
けど仗助がインターフォン押したときも結構な音量で鳴り響いてた記憶があるし、家を間違えたのでは……などと笑止ッ!世界の空条承太郎に限ってそれはないッ!

あ〜〜あ!おれに承太郎さん感知センサーとか搭載できればなー!擦れ違いなんて起きないのになー!!!




『………お?』




感知したのでは?

そしてまさにその時、おれと露伴はアッチの世へ飛び立ったのでは??





『やはり運命なのではッ?!』

「……!」



隣で承太郎の肩が僅かに揺れた。
ごめんね、おっきな声出して。



しかし気付くべくして気付いてしまったのではないかディスティニーアベック説はやはり真理だったのではないか!?

運命であろうとなかろうとおれのラヴに変わりはないのだし、必然じゃなく彼自身の意思がおれを選んでくれたなら万々歳じゃあないか、と承太郎を目前にしながら湧き上がる心のモヤや露伴への恨み辛みを誤魔化していたが、再び希望が生まれた。

これは再検証の必要がありますねェ!!!






『近いうちに、もっかいお泊まり行くと思います。露伴ち。』

「そうか。前にも言ったが、向こうはスタンドの抵抗がほとんどない。使うなとは言わねえが、気は抜くな。」



『はい。……はい?』




なにその注意喚起どういうこと?

どうしておれが露伴を元の世界に連れて行ったのバレてるの??



なんてナチュラルにミサイルを撃ち込んでくるんだろう一体全体どこからどこまでご存じなんだろう。こわいこわすぎる。

別になにか悪巧みしているってワケでもないし、ないのだけど、露伴を連れてくって行為が決して良い行いではない自覚はあったので、勝手に部屋の掃除をした母親がご丁寧に隠していたエロ本まで本棚に並べてくれてたとか、そうそんな気持ち。

どう言葉を返せばいいか分からないおれは、ただ前を見据えながら瞬きを繰り返すのみである。





「彼は頼りになる男だ。協力者としては申し分ないだろう。」

『そ、ですけど…知っててお見送りしたので…?』

「いや、寝るために泊まりに行ったような話だったからな。今しがた合点がいった。」




あくまでおれの行動を尊重するその感じ、オトナすぎんか?

キューンと締め付けられる心臓に手を当てて羨望の眼差しで承太郎を見つめると、分かったのか?なんてまたオトナの笑みを見せながらおれの前髪を掻き上げた。

ンンーーー!朝から一切の出し惜しみがないッ!





『ウェへへ…はーい。』


くしゃくしゃになった前髪を直しながら、おれは返事を返す。
ダメだ緩みきった薄らキモい笑顔が零れてしまう……ケツの穴がデッカすぎて惚れ直す他ねえよ…(語弊がある気がするがニュアンスが伝わればいいんだ)

ディスティニー検証が終わったら、ちゃんと報告するからね…ありがとうね……






『ヒィーーー!』

「やかましい。」



心がルンルンスキップで油断しきってていたおれ。先ほどの虚偽の供述を現実とせんばかりに足取りまでルンルンなおれ。だが今日の承太郎はそれだけでは終わらなかった。


こんな、往来で、手を。
指を絡めて、手を。

昨今、恋人同士で手とか繋ぐの?!片手にスマホ、片手間に彼女くらいのラフなお付き合いが増えているこのご時世、この年の差で、しかも男同士で、手とか繋いじゃっていいの??!





『じょ、たろさん……あのコレ、すごく、その……うぉぉ…』

「黙って握っていろ。」

『いや無理でしょ……なん…普通にヒト来ますよここォ!』




握り返す勇気はないけど振りほどきたくもないおれは、彼のせいにしてこの束の間を喜んでいるわけで。

この心臓のバクバクはときめきなのか、いつ誰とエンカウントしかねない緊張感からなのか。正直どんどこ寿命が削られてる気しかしないので、そろそろ解放してもらいたい。(でも自分から離したくはないなんておれってヤツは!)




「ハァ………」

『えっ!』



この期に及んで溜め息?!なにがお前を落胆させたんだ違う違うんだ決してイヤイヤ繋いでるんじゃないし決して同性で手をつないで歩いてるのが恥ずかしいってワケでもなくて違うんだヨォ〜〜ッ!!!

そんな気持ちをどう言葉にすれば伝わるものか。
語彙力一年生のおれが咄嗟に浮かぶはずもなく、ただ繋いだ手をぎゅっと握り返した。





「ハァァ〜〜〜〜………」

『なんなの?!そんなに幸せ逃がしてどうしたんですか!?』



彼は頭を左右に振り、やれやれだぜと聞こえてきそうな素振りを見せる。

そんなのおれがしたいよ!理由を話せよ不安でしょうがないだろ?!不安のあまり手汗かいてきた気がするから、いよいよ手を離したいよ!!おれを幸せと絶望の狭間に置くのが上手ねェ〜〜ッ??!




「今夜抱く。」
『真顔で何言ってんすかムリに決まってんでしょ。』



スッと汗が引いた。

急に抱きたくなって謎の溜め息吐いてたの?手を繋いだくらいで??その性欲はもう病気の域では???
おれが健気に尻を拡げてる期間なのだから、横槍入れてくれるな。いま入れていいのはエールだけだぞ。




「すごい剣幕だな…いつもその顔でいりゃあ、仗助にもナメられないんじゃあないか?」

『えっ!いやでも仗助と会うたびに承太郎さんからちんちんの脅しされたくないな…却下で。』

「そういう話じゃないんだが…それに、脅しでもない。」





『手を離してェ!!!!』
「断る。」



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