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ソファに並んで座る男ふたり。
15センチほどの距離を置いたすぐ隣から愛しのフレーバーがふわりと漂い鼻をくすぐる。

いますぐ抱きつきたい堪能したい。




『(ダメだ惑わされるな気持ちを入れ替えろ…!)』




それにしても、このヒトは何を思っておれと結ばれる道を選んでくれたんだろう。
いつ終わるかもわからない。途端にパタリと会えなくなってそれきりかも知れない。

だから。だけど。






『とても不躾な質問なんですけど… アメリカへは、予定通り戻られるんでしょうか?』

「そうだな… 家も活動拠点も、基本は米国に置いている。できれば、お前にも一緒に来て欲しい。』




し、知られざる承太郎の私生活…!

ご実家はいまも日本にあるのだろうか。ホリィさんはお元気ですか。是非にジョジョの武勇伝なんかを聞かせてほしいけど、間違っても初めまして新しい恋人ですとは言えないな…







『へへ、モチロンです。この世界は承太郎さんのために回ってると言って過言ではないですからね!』




そして、やっぱりおれよりずっと明確なビジョンを持ってた。
ただライクを拗れに拗らせて、傍に居たいから好きですお付き合いしましょうなんて浅慮もいいところですおれ!(それでいて結ばれちゃうんだから豪運もいいところですサイコーハッピーイェェ〜!)





『あっ違いますよ!?アナタがわたしのすべてッ!みたいな依存甚だしい意味合いじゃあないですよ!!?』

「‥‥‥‥‥。」

『おぁぁガチ引きしてますね…?ちが、いやホント否定すればするほど真実み増すけど違うんです……』





眉間を狭め、極めて厳しめの表情で目を伏す承太郎。

こっえーーよおい依存してる訳じゃあないよマジでしてないよ居なくなったら堪らなく寂しくて心が張り裂ける思いだろうけどひとりでも生きていけるよホントだよぉーーッ?!

ただ好きだから傍に居たいってだけで…え、もしかして重い? でもお前が付いてきてほしいって……重いのおれェ……??








「おれを…スタープラチナの存在を、快く思わねえ連中もいる。おそらく、危険な目に遭わせる事もあるだろう。」



ほほう、危険な目に。

誘拐とか?拷問とか?




『そんな事か、よかったぁ〜〜…… 今更、依存系断固拒否姿勢とられたらどうしようかと…いや依存系じゃないけどないですけど!』

「真面目に聞かねえか。命を落としかねねえ…そういう域のキケンだ。」

『わかってます。死ぬ前に巻き戻してやりますよ!』




おれがへらと笑ってみせても、なお神妙な面持ちのまま眉間の溝は深まるばかり。(この顔面を目の当たりにして口が利けるあたりおれも慣れたもんだぜ)

軽く見過ぎだと思われてるに違いない。
死と隣り合わせの世界におれを踏み込ませてしまうことを、己のエゴだとでも思っているんだろうか。


それは違うぞ承太郎。








『承太郎さんこそ、おれを甘くみてませんか。愛する者のためなら戦えるオトコですよ!おれは!』




捕えられたところで、怪我をしたところで、命がある限りは巻き戻しがきく。おれほど捕まえられない人間もいないだろう。

承太郎の敵だというなら、脳みそだけ赤子に巻き戻すことも辞さないぞ。(想像してみたけど恐ろしすぎるので出来れば丸ごと戻して赤ちゃんポストに入れたい)







『だから、ね。連れてってください。』

「名前…」




『承太郎さんの庇護は、ご家族にこそ必要でしょう? おれにはブリスルがいますから、心配ご無用です。』

「利口だな。…利口すぎる。」

『そうですか? その分、空いてるお時間にひたすらメイクラブをお願いしたい所存ですけど!』




そう言葉を吐いた刹那、目を細めおかしなものでも見るようにおれに視線を送る承太郎。

知る由もなかろうが当然こちらは6部も読破しているので、アメリカを拠点にしたいという言葉の理由はお見通しなのだ! 決してお利口な訳ではない。(けどご褒美がもらえるかもしれないのでお利口さんのフリはしておこう)

むしろこれから訪れるデンジャラスな日常への不安が鼻くそほどしかないおれは、心配性だなぁなんてヘラついている。







「意味を分かって使ってんのか…?」
『なにがですか?』


「make love.」

『メッチャ発音いいですね?!そうだおれも英語覚えないと…!』





康一クンのイタリア調査よろしく岸辺の露伴に英語ぺらぺ〜らにしてもらおう。

頭にない知識まで理解できるようになるってやはりイカれてんなヘヴンズドアーって気持ちだけどあまり考えない事にする。それよりまたヤツに借りを作るのが心底いやだ。


あっ、お泊まりのこと承太郎に話さないとな…





『お伝えし忘れてたんですけど、今日おれ』
「まるで分かってねえって顔だな。…まぁいい、なんだ。」



『えっ、むしろなんですか?! 何を分かってないのおれッ!なんかしました??!』

「やかましい馬鹿者。話を続けろ。」
『バカ!!!もの!!?!!?』




そんっな直接的な罵倒されることもそうそうないけどどうしたっていうの?!

おれはむしろこれから沢山イチャイチャしましょうネッなんてお誘いを恥を忍んで口にしたつもりだったんですが伝わっていない??いくら両想いとは言え男とイチャコラはちょっと……とかそういう…?
いやないよなむしろ承太郎が押せ押せ気味なくらいだし。




幸い表情はなんてことないいつもの真顔なワケだが、怒ってはいないってことですか?

このタイミングで露伴の家泊まりに行きますバイバーイ!ってのはまかり通りますか??







『急なんですけど…、露伴先生のトコに泊まりに行っても……?』




おずと口に出した問いを受けて、彼が僅かに瞬きを早める。




「構わんが… 仗助たちといい、知らぬ間に交友を深めているんだな。」

『承太郎さんといるときは承太郎さんが最優先であり最重要なので他に構ってるヒマありませんからね!』



「距離を置くべきか…」
『冗談じゃない殺す気ですか傍に居てください。』




それに勘違いしてくれるな、交友は特段深めちゃあいない。おれとしてはそんな時間があるなら承太郎との交友をドンドコ掘り進めていきたい気持ちだ。

真顔でふるふると首を左右に振り続ける。

貴方はご存知なかろうが、おれたちはディスティニーアベックなのだ。
ゆえに、やや依存性強めになることも不可効力…致し方ないのだァ!(ついに開き直りましたァ!)






『酔ってきました。』
「止まれ。」



わかってくれるまでおれの首は止まらない。



思い知れおれの重い愛を知れ!
そして受け入れてくれなにとぞ!!!

むしろ承太郎にもおれがいないとダメな片鱗を見せてほしいのだけど、この人は愛した妻と娘すら手放して孤独と生きる道を選んだ。急に変われやしないんだろう。

だからいまは、おれだけでいい。







「…最優先で最重要のおれを置いて、漫画家先生のところにな。」
『ややヤキモチですか?!!』



ストップ・ザ・おれの首。

強がりじゃなく、おれはリアルガチで期待してなかったのに!お前ってヤツは!どうしてそうおれの欲しいものをスッと与えてくるのかなぁ〜〜〜ッ!!!

ああ、欲されている……
その事実だけで心が満ち満ちてゆく………





「おれと越すはずだった夜を他の野郎と過ごすと考えると、そうだな。妬けない事はない。」

『ウぶッ……!』



うれしいすごくもうハイパーに嬉しいんだけど少し待って過多だよえづいちゃうよぉ……

もっと慣らしてからにして心満たすマンも大概にして。己の色香をもってヒトを殺められることを自覚してねぇ…!







『おで……いがない…! ろはん…しらない…ッ!!!』



そして効果テキメンなおれ。

その色香からは何者も逃れられんッ!!!





「猩々(しょうじょう)………?」

『ニンゲン……くう…………ってバカァ! ほんとジ◯リ好きですねェ!!?』




「ジョークだ、気にせず行ってくるといい。」
『どこからがジョークですか妬けちゃうってのもジョークですかもしかして?!』
「さてな。」




ククと喉で笑う承太郎。
アア〜〜〜なに笑ってんのもぉ無邪気で愛らしい大変愛らしいぃ…そんな顔してジョークだなんて小悪魔ァ!もっと振り回して!!やめてェ!!!

などと内なる葛藤を繰り広げているおれを余所に彼がソファからゆっくりと腰を上げ、そうして真正面に。






「夕飯くらいはここで過ごしていけ。」




身を屈めておれの額に触れるだけのキスを。

また貴方ってヒトは…!ハンサムの大売り出しかよぉ…ッ!!!夕飯どころかいまもうドタキャンかましたくて堪らないよ〜〜ッ!!


胸の中がギュンギュンで居ても立ってもいられないおれは、ソファの空いてしまった空間へ勢いよく倒れ込んだ。






「返事は。」

『……すきです。』




ときめきが止まるところを知らない……きっとおれは早死にする………

それでも構わないと思うくらいには、心底惚れてしまっている自覚があります!フェニルエチルアミンを生涯生成し続けられる自信がありますでありますッ!!



少し離れたところから、優しい声がきこえる。




「知っている。」




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