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『ッツァ〜〜〜〜ッ!』

「うるさいよぉ。」





諌めるつもりがあるのかないのか。

大して親しくもない親戚のおばちゃんが家にきて取りあえずコンニチハと挨拶をするくらいの軽さで、おれの奇声(自覚はあるのだ)を制止せんとする。

そんな声の主は、





『店長って処女ですか。』

「すごく怖い。姿勢だけはものすごく真面目に仕事してくれてるから尚更怖い。」





なにを隠そう我らがショップマスターである。

あの後、論文を仕上げるとか何とかでお仕事モードに入った承太郎。(たぶんおれが寝やすいように気遣ってくれたのだと思う)
その背中をぼんやり視界の端に捉えながら、おれはいつもの如く秒で眠りに就き……そうして難なくテレポーテーションできてしまった。

もう八割方確定では??
承太郎という男あってこその名前。





『非処女だったらいいなと思って。』

「なにがいいの…? 苗字くんはボクの性事情に興味が」
『それはないんですけど。処女ですか?』





実は起きがけに軽くggってみたのだけれど、おれが考えてるのより遥かに苦難多め。未開発の尻は相当デリケートらしい。(いや、未開発じゃなくても菊門はとってもデリケートだけども)

おれはもっと知識を得たいもうバイトどころではない。やるべき仕事はもちろんやるが正直休憩時間が待ち遠しすぎて時の流れがハチャのメチャに遅く感じる。

実は店長がゲイで知りたくもない情報まで諸々教わっちゃいました〜!みたいな神展開を期待したが現実はそう甘くはないようだ。






「そ、そうだけど… 当たり前の返答してるのになんでちょっと後ろめたいんだろう…」



『ですよね。残念です。』
「ホントこわいよ……」




ゲイバーに出向いておネエさま方に話を伺うのが確実なのでは。職場の人間から情報を得ようなどとリスキーすぎるのでは。



いやでもダメだ… 夜は承太郎と今後について話し合いがある。そうだ話し合いがあるんだった尻のことに夢中で忘れてた。

しかもおれ露伴の家泊まりに行くことも話してないし何してんだよぉ〜〜!夢中にも程があるってばよおれが承太郎とすげーセックスしたがってるみたいじゃん!!!違うのぉッ!






「休憩時間を繰り返せばいいんですの。瞬く間にホモセックスマスターですの。」

(『そんな二つ名はいらないッ! 大体フェアじゃないだろそういうの… 私利私欲のためにスタンド能力使うのはよくない。クセになる。』)





ウソだほんとは使いたい気の向くままに時間を戻して人生イージーモードにしたい株で手っ取り早く億万長者になりたい。
だがしかし株取引とかやったことないからスクラッチとかでまずは小金を手にしてそこそこ良い温泉旅館に行きたい。


いざ実行できるとなると道徳心がどうにも咎める。それをやっちまったらヒトとして終わるんじゃあないかっていう恐怖心が勝る。

きっと大切な感情だ。欲望に負けるなおれ!








「なァ〜〜にをいい子チャンぶってますの?だったらお望み通り、ボクのせいですの。」












コトは一瞬。

文字通り、ひとつ瞬きをしよう間に終えられた。





『あ〜〜〜ッ!やったもんコレ!あーーやったのお前だけどお前ができちゃうのっておれのせいなんだろ?!ぜんぜん罪悪感が軽減されないよぉッ!もうおれの意思だよ!!!』

「やりたいけど、やらなかった… それは重要なコトですの。」
『うるせェェ〜〜〜〜!!!!!!』





これだから新型スタンドは!!!主人への干渉が過ぎるんじゃない?!おれをクズの道に引き摺り下ろそうとしていますか?!!

鼻息の荒ぶりが止まることを知らぬ最中、ポケットの携帯に着信。反射的に慌てて取り出したそのディスプレイには、不覚にもすごく気の合うバカの名前。





なるほど。

場所はおれの部屋。カーテンは閉まってるけど外は明るい…きっと早朝だ。そこにこのバカの電話ときたら要件はわかりきってる。






『もしもし。バイトなら代わるよ、ケーキ5つで。』






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「おしりの穴はとても繊細で傷が付くのは一大事ですの。空条承太郎には、必ずしっかりと爪を切ってもらうんですの。」

『どうしてそんなに意欲的なの?』




どうやらこのスタンド。まるで個体として在るような行動を取るだけあって、学習能力が備わっているらしい。

インターネットから男同士の正しいセーフティセックスを学ぶおれの傍ら、なぜか食い入るようにディスプレイを見る姿に怯えたが…そうかおれの為であったか。





『ありがとうね、ブリスル。』
「…怒ってませんの?』
『そんなのお前が一番わかってるでしょ。』

「ふふ、どういたしましてですの。」





一時は暴れたが、こうしてゆっくり調べものをする時間は切実にありがたい。そして素敵なアドバイスも。(でもきっと承太郎に向かっておれの尻のために爪を切ってくれとは言えない。常に手入れしていると信じよう)






『へーー前立腺てクルミ大なんだ。…クルミって個体差デカくない?前立腺も個体差あるってこと??』
「ピンポイントにおち◯ちんを当てるのは難しそうですの。」
『ねーホント。


……いやなんなの?なんか企んでる?』





感謝した矢先であるが、おれのホモ行動に対して数多の舌打ちをかましてきたブリスルだ。懐疑心を抱かない方がおかしい。

そっと横に目線を移すと、豆鉄砲を喰らったような顔(をしているような雰囲気)でこちらを見るテディベア。





「空条承太郎とは、放っといてもくっつくと
思ってましたの。本当に焦れったかったんですの。」
『そんなこと思ってたの世界でお前だけだよ。』





1ミリも焦れったくなかったよ急展開に次ぐ急展開でベロチューキメた自覚あるよ。

ブリスルはミ◯フィーがしゃべる時さながら、鼻とお口をフゴフゴと上下させて言葉を続ける。





「マスターが望むコトは、形にしたいんですの。それがボクの存在意義ですの。」






そう言って曇りなき眼がおれを見つめる。プラスチック製のおめめが陽の光を浴びてキラリと輝く。



ああ、おれはなんて分別のない男だろう。宿主の幸せを願わないスタンドなどあるものか!

ごめんよぉ…ごめんよブリスル……… でもそう言われるとおれが心の底では猛烈にセックスしたがってるみたいで少し釈然としないよぉ……






「そうとなれば、そのサイトは二の次ですの。まずは空条承太郎の男根をいかにマスターが受け入れるか、ですの。」
『だん……ねぇ気のせいだといいけど少し面白がってる? 気のせいだよねまさかね。』




うわぁバカおれ!思い直した先から!

すぐに裏を疑うのは悪いクセだ。コイツは捻くれてるけど悪いヤツじゃあない、それは理解してる。こんなことしてたら幸せのチャンスを逃すぞおれぇ!







「まさかですの〜!惨敗したらいつでもリトライさせてあげますの〜ヒャヒャ!』

『こっっわッ!!!!!なにその笑い方初めて聞いたんだけどテメーおれの純情弄びやがったな見てろよケツでハチャメチャに気持ち良くなってやるからァ!!!』







時刻は正午。

高らかな笑い声がテディベアの脳天から突き抜けてきたこの瞬間の怒りを一生根に持つと心に決め、おれは尻の拡張法を模索し始めるのであった。




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