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ホテルの一室に、ひと組のアベック。
しかもおかしな事にお互い勃起してるときたら、もうそういう雰囲気は避けちゃあ通れない。
帰ってきて早々フルスロットルすけべの承太郎をどうにかこうにか諌めなくては。この雰囲気を打破しなくては。なぜならおれは一切の覚悟がないし、つい先刻ようやっとこのヒトをイケない妄想の対象にしてしまったところだ。
まだ早い早すぎるの動物すぎるの。
『服に!手を!入れないでください!!』
「ズボンに差し込んでおかねえお前が悪い。」
『おれはおじいちゃんですか…!
ていうか承太郎さんがいつもシャツ入れてんのそんな理由?!ショック〜〜ッ!』
「なぁ…すこし黙れねえのか。」
『いま黙ったら色々失う気しかしないのでムリですね。』
よくおれに向かって黙れないのかと問いかけてくるけど、黙るべきだと思うときは黙ってるんだよ。
おあずけがいかに辛い行為かは同じ男として痛いほど存じ上げている。いるが、今回に限ってはただの一歩も譲歩は許さないぞ一切の妥協なしで完全なるNOです。
「こんな屈辱は初めてですの………」
地の底から響くかのごとく心底恨めしげな声が、ごく小さな音量で耳に届く。
ごめん、ごめんよブリスル…… おれだってできることならこんな馬鹿げた事に能力を使いたくはなかったけど、他にいい打開策が見出せなかったんだ許してくれ…!
『ちんちんに血が上った状態じゃあ埒があかないので、一旦治めさせていただきました。』
そう。おれは互いの肉体を局地的に巻き戻したのである。
勃起したからセックスをしようなんてそんな本能まかせの展開は良くない。生娘かよって思われるかも知れないがよくよく思い出してくれ。
まだお付き合いを始め2日と経過していないんだッ!むしろ正式に結ばれたのなんてつい数分前だよ分かってんのぉ?!
「すまん。」
『いえ、我に返ってくれて良かっ』
「勃起した。」
『何にッ?! 分かんないッ!もう分かんないよ暴れ馬なのぉ!??』
ブリスルの機嫌を損ねることは百も承知で強制敢行したっていうのにそんな秒で戻っちゃうなんて承太郎さんってば若〜〜ァい!
なんて混乱が度を超えて少し愉快な気持ちが湧き上がってしまっている間に、束の間歩みを止めていた彼の手がおれの胸の突起をするりと撫で掠めた。
『ひ、…ちょ、胸なんてない、でしょッ…… 撫でるのやめてほしーなぁ…!』
「ここは感じねえのか?」
くに、と指の腹で優しく突起を摘まみ上げられる。同時にビクリと身体が跳ねた。
違うんだ弁解させてくれ。
気持ちよくてとかそういうんじゃあないんだ。ただ敏感な部分に刺激を与えられて生理的反応をしたに過ぎないんだ!どうか勘違いしてくれるな!!
だいたい男の乳首なんてなァ!!母乳出すわけでもなしただオマケ程度付けてみたに過ぎないんだよ!!!突起が見当たらないほどほぼほぼフラットだよ!いまちょっと反応しちゃって立ってるけどそれでも可愛いもんだよ米粒よりずっと小さいよ!!!!
だからそんなに捏ねくり回さないでッ!!!!
『感…っっじるかァ!!!!!そういう承太郎さんは乳首感じるんですか感じないでしょお?!』
「いや、わりと感じるな。」
『アアアアアなんなんすか羞恥心ログアウトしてんすか何をくそ真面目な顔して"いや、わりと感じるな(ゲキ渋バリトンボイス)"じゃあ!ないッ!!!こんな唐突に性感帯事情明かされてどう処理しろと?触れろとそのニップルにッ!倣うように捏ねくり回せと??!!』
このヒトのスケベ心が沈静化しない限りいくら時を戻してちんこを諌めようと何度だって立ち上がるサって感じだ。
ならばいっそキスする手前まで戻してしまえば感情ごと収まりがつくのだろうけれど、おれを恋人だと言ってくれたあの言葉たちをなかった事にはしたくない。
捲し立てて吐き出した音の数々は彼の耳を右から左へすり抜けたようにまるで意味を成さず、尚もその手はおれの乳首を親指の腹でころころと弄ぶ。
薄い皮膚の上で何度も、何度も、円を描くように。
『も…、いてェーすよ…… ヤダってぇ…ッ!』
「それだけじゃあねーような面だぜ。」
『そうでしょうねェ〜〜!』
怒ってますからねェ〜〜〜!!!
人生で初めて乳首を他人に捏ねくり回されて(こう言うとやや語弊がある自分で弄ったことも断じてない)素直に快楽を模索できると思った?! ああんっとか言ってゴロゴロニャーオするとでも思ったァ??!
もうやめてよ乳首取れるよ乳首って生えてくんのかな……
『ッンンおおお?!!ど、どこ舐め…ッ、』
彼はおれの脇の下からスルリと頭を潜り込ませて、やや厳しめの体制で真っ赤な舌を伸ばした。
そんな必死におれの乳を求めているのか絆されそう!!!なに嬉しいヤダァ!そんなトコ舐められたくはないけど求められる幸福感すんごいよォ!!!
あと舐められるとさすがにチョット気持ちいから切実にやめてほしいゾワゾワする…!
「乳首だ。」
『だ……っからなんなんすかァ!!!勃起するとIQ下がんですか?!?』
「? なぜ怒っている。」
上目遣いで小首を傾ぐなアラサー男性!
いや正直かわいいよこんな恰幅が良くて男性ホルモンむわむわのクセに解せない顔して頭傾けてんのグッときましたたまにはIQ下がるのも悪くない…悪くないのだが条件が悪すぎる。
一体どうしたって言うの。チンコに血が集まりすぎて脳みそ回ってないの??
『………わかりました。』
引き続き乳首を嗜まんとする彼の動きがピタリと止む。
これは好機とばかりに腕を上げて脇下から彼の頭を追いやった。どうやら抵抗する様子もないし、ようやくまともに話ができそうだ。
『おれが上でいいなら、このまま第1ラウンド突入も辞さない覚悟です!』
おれの尻は決して未知の可能性を秘めていない。
異物を入れりゃただでさえ割けた尻をさらに割くこと必至だし、肉感もなくて腰を打ち付けられた日には互いの股関節をぶち割りかねないし、何より至極当然おれが女役というようなその態度が気に喰わない。
おれだって多少の…いや、微小の経験値はあるのだ。おれだって男なのだ!
「…おれに女役をやれ、と。」
『体積的にもその方が被害少なそうだし、柔軟性に優れ適応力グンバツの承太郎さんなら意外とイケるんじゃないでしょうか!』
「お前、勃たんだろう。」
『ヒトをインポみたいに言うのはよしてください。』
ナメるなよおれがお前でスケべな妄想なんてしてみろ一発だぞ。秒でフルボッキだぞ!!!おれの理性に感謝しろぉ!!!!
承太郎さんはケツまでムッチリ筋肉質だからおれよりクッション性に優れているし、痛みにもさぞ強かろうし、ホラみろ考えれば考えるほどに合理的だ!
なんて思考を巡らせながらも、この人が頷くとは正直思っていない。おれはただただ時間稼ぎがしたいのだ。
結ばれたからといって、大団円などということはなくて、おれも彼も男を恋愛対象として見るのは初めてのことだし、いざ互いの裸体を目の当たりにして血の気が引くこともあるかもしれない。
こっ、コワァァ〜〜〜ッ!!
身体が心に伴うとは限らねえもんそんなの誰も悪くないじゃんコワムリーーッッ!
「いいだろう。」
『ですよね〜〜!……っえ、…ハ?』
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