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人様のホテルでシャワーを済ませてから、ああ昨日と同じ下着を履くなんて最低だとかぶつくさぬかして岸辺露伴は家に戻っていった。

(おれのパンツは貸したくないしアイツのパンツを置いていかれたら嫌なので、聞こえないフリをした。洗ってあるからって他人のパンツを履けるような人間とは思えないし、善意を踏み躙られる可能性まで考えて、おれは聞こえないフリをした)








『あの人がいるからおれは向こうに帰れて、
あの人がいるからココに来れる……』







いやそれはもう運命やん。





語尾がエセ関西弁になる程度には浮かれている。

さっきまでハイパー取り乱してたまたま部屋にあったバンダナに縋るほど落ち込んでいたのに、仮説が浮上してからというものおれの心はお花畑だ。

おれと承太郎はディスティニーアベックなのだから!フハハハァ!!










『夜には戻るって言ってたか。』




うっかり微妙な関係になってしまったばかりに女々しいようで訊けなかったんだが、どこに行ったのかやはり気になる。

イタリア? には行かないはずだし。

奥さん? いやどっちにしろ今夜戻るんじゃトンボ帰りにも程がある。





『素直に訊けばいいのに、ばかめおれ。』




つくづく面倒な性格だ。

でもあんなベロチューハッピーの直後(飯は挟んだが)にどこ行くの?誰に会うの?とか急に彼女ヅラァ〜!って感じするよね?!

おれだってベロベロされなかったら普通に訊いてたと思うしヤダァ寂しい!とか言えちゃってたと思うもの!!









『………ボッ……』



そう言えばあの人、おれ相手に勃ったんだ。

いやちょーデカかった、外国の血が入ってくるとやっぱ違うわ。アレたぶんフルパワーじゃないもんね。甘勃ちであのボリューム感だもんね同じ男として羨ましすぎる。



と言っても、ディープキスっていう行為に伴ってちんこが反応したってだけで、おれも承太郎も互いをセックスの対象には見てない。

でもまぁ、キスは…したい、し、触りたくは…ある。ので、やはり友愛とは違うんだろう。








そして互いに同じ気持ちを持っているとわかったいま、おれは何を目的にここでの時間を過ごすべきなのか。

残り少ない彼との時間を、大切にするのはもちろんだ。でも、そのあと。

それじゃあお元気でと言って、物分かりのいいフリをして手を振ることはきっともうできない。








『連れて行ってください?』




いやだめだろ。向こうは妻子持ちだ。

愛人の、しかもオトコを連れ歩くなんてリスキーすぎるし、承太郎もそんな真似はしないだろうし。


はい、次ィ!







『行かないで…?』




ってバカァ!

永住させるつもりかここに!
できるわけないだろ相手は妻子持ちだ!

ああッ… どうあっても家族には敵わないし、彼からそれを奪い取ろうなんて気は更々ないし(そんなことできやしないだろうし)、愛ゆえに家族から距離を置くのも知って………



それはいつだ。








『うぁ、ウワアアアア〜〜〜ッ!!!!』







最低! おれ最ッ低!

いま離婚待ちしようとしたの?!
ゴミクズの極みだよォ!!!

離婚すればおれと一緒になれるわけでもなしそれがどんなに断腸の思いか知ってるだけに自己嫌悪がすんげーよ!!!!燃えてしまえおれぇ!!
















ーーーコン、コン、







『え………』




ずっとおれのターンに割って入ったノック音。チキンハートがノックオン。
(韻を踏めば知的になるかと思いきやとんだ逆効果だぜ)

いやそんな場合ではない。

わざわざ扉をノックするなんて承太郎でもなければ露伴でもないってことじゃ… あっ、モーニングか!





『はーーーい!』





覗き窓も確認せずおれは嬉々として扉を開ける。

そして、閉める。









扉の向こうは確認した。
直接、肉眼で確認した。

思わず閉めてしまった。だってごはんが届いたんだと思ってたのにそんな。





「オ〜〜〜イ。開けろぉ」



ゴンゴンゴンゴンゴン









ヤンキーが届いた。

普通に顔が怖くて身体が勝手に動いたとしか言いようがない。だってそれが理由だ、それ以外なにもない顔が怖かった。



アポイント取ってくれたら決してこんな対応はしないし、完全に不意を突かれたんだ。

どちらかといえばフレンドリーな第一印象を与えたかったのに!どいつもこいつも!ラインがない世界だからってこんな朝っぱらから突撃してきていいと思ってんのォ?!!








『おはよう。
承太郎さんなら、昨日から出てるよ。』

「なんで閉めたんスかぁ?」

『夜に戻るって言ってたから、伝言があったら伝えるけど。』







相も変わらずおれに対して敵意(ではないかもしれないが悪意は確実にある)まっしぐらだなお前は。

だけど、おれが思わず扉を閉めたのはコッチじゃなくて……









「オカマみてーな兄ちゃんだのぉ〜〜。」






この礼儀もへったくれもないツートンオールバックヤンキー虹村弟のせいである。



お前たちはモヤシ野郎を総じて自分より下だとでも思っているのか?

それともおれから惰弱惰弱ゥなフリーター感が滲み出ちまってるのか??









「アンタ、スタンド使いだったんスね。」

『なぜ、』
「勘違いしねーでくださいよ。おれ達ァ、必要な情報を共有しただけッス。」







まぁ、そうか。
まるでおれと承太郎だけの秘め事のような気持ちでいた。

おれの世界に行っても解決の切り口らしきものもなかったし、ふたりで頭を悩ませるよりずっと得策だ。



でも一言あってもよくない?!!

そういう不言実行なところが美徳であり欠点でもあると思うなぁ!!!!









「んで、ちっとばかし力を貸してほしいんス。」

『能力を、ってこと?』
「もちろんタダでとは言わねーッスよ。俺らの出来うる限り、アンタの条件は叶えます。」







"俺ら"ってことは、ふたりからのお願いなのか。

おれの能力が必要なお願いごとって、ヤバい気しかしないんだけど大丈夫か?
リセットで解決しちゃいけないのが人生ってもんだぞ大丈夫か??

ふたつ返事とはいかない。
真っ直ぐにおれを見据える仗助の目線が痛いが、こっちも事情が込み入っているんだ。









『立ち話もなんだし、中で話そう。』







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