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『これ傍から見たら完全にゲイですけど大丈夫ですか。』
承太郎のフレーバーを3分近く身体に取り入れ続け満たされたところで、おれは尚も吸入を続けながら彼に問いかける。
カーテン閉めてないし、窓ガラスくそでかくてレースカーテンをしていてもぼんやりと影くらいは見えてしまうだろう。
承太郎のことだからストーカーとかいるかも知らんしカメラが設置されている可能性も否定しきれない…!
待ってくれその場合刺されるのはおれか?
いやいや待ってくれ待ってくれ。
おれも隠し撮りしたい。
「これだけ細けりゃあ女に見えんだろ。」
『いや無理があるでしょおれそこそこタッパあるし。スーパーモデルですか。』
スーパーモデル連れ込んでても違和感ないな…
むしろ見た目的には連れ込んでそうだもんな超ど級のいいオンナを。
女が騒ぐのがムカつくって言ってたから、きっとヤマトナデシコ〜〜で聡明な女性がタイプなんでしょうな。ふん。
そんなのおれだって好きだよ!!!
おれだってそんな彼女ほしいよ!!
倍率高くて高嶺の花おつかれさまですって感じだよ!!イケメンはいいなあ〜〜ッ?!!
「さて、外に飯でも行…… 名前?」
バレるのが恐ろしくて意識が向かなかったけれど、そうか、きっとハグはこれが最後なのか。
最終日のご褒美なのだな。
涙脆いおれにはやや苦行に近い部分があるが、嬉しいぞ神さま!ありがとう!
『もうちょっとだけ、いいですか。』
そう告げると、背中から離れた手のひらがゆっくりとまた舞い戻って、おれを温める。
こういう時になにも言わずに許してくれるとこ、とても好き。好きだ。
『……ドクドクドク』
「うるせぇ。」
まぁおれはなにも言わないワケないんだけど! 甘い雰囲気とかシリアスな雰囲気苦手すぎて自らぶち壊しにかかるけどぉ!
お前もヒトの子よのぉ〜〜!
こんなおれなんかにも心音早めてくれちゃって〜〜!にまにま!
『焦らなくっても、なーんにもしないっす。男同士の仕方とか知らないし』
この匂いがおれを離してくれない、と深刻なトーンで伝えた刹那。
少しの引力と、感触と、温もりが、
くちびるに。
「男も女も、する事は変わらねえだろ。」
『………ハハ…ハハハ』
えっ待ってほしい理解が及ばない!
キ……えっ……キ…… はぁぁ〜〜ッ?!!
よし、そうだ戻そう!
よく分からないから1分前に時間を戻そう!!!(耳元で盛大な舌打ちが聞こえたがおれはいま、とてもとても大事な局面なので知ったことではないのだ)
『(戻った? これ戻った??
あっ戻ってるゥ〜〜〜ッッ!!!!)』
顎クイリターンズーーー!KUAAA!!
いままで色々と妄想を繰り広げてきたがさっきめっちゃ口唇やらかかった記憶がほんっっの1ミリほどある!
今度こそ!今度こそ記憶に叩き込んでやる!!!
「おい…」
『はいィィ……!』
「テメー… 時間を戻したろう。」
『?!!!?! なんっ! なな』
「見るからに待ってましたって顔だ… 興が醒めたぜ、離れな。」
ウウウワアアアア!!!!
欲を張ったせいでおれと承太郎がちゅーしたっていう事実がなくなった!未遂になった!しかもバレた!好感度もガタ落ち!カラダを引き剥がされて背中を向けられています!!
典型的な転落パターンだ消えたい!
もう一回戻したい!
でも過ちは省みなくてはならない……ッ!!(おれの根はとても真面目)
『だって!なんでキスなんてするんですか?!』
「してねえ。」
『したんすよ!いま未遂だけど!さっきしたの!!』
なんでどうしてなんて訊いたって困らせるだけだってわかってるけど、なんでかどうしてなのか理解が及ばなすぎて黙ってやり過ごすとか大人な対応ができないよごめん!
欧米じゃキスは挨拶みたいなモンだってか?! いやいやいやクチビルだよ接吻だよ!!? 頬とはワケが違うよ!!!
「キスのひとつでやかましい奴だ。」
『チャーーラーー!超チャラーーーー!』
(某人気少年マンガのOPでご再生ください。)
「……。」
『ゴメンなさい。』
ねえ、殴るぞの代わりに黙ってスタープラチナ出すのやめてくんない。
確かにウザ絡みに近かったし、おれを元気づけるためかお情けかわからんが不意にキスしようとして思いがけずバレてたの恥ずかしかったかもしれないけどさ。
でもやっぱり無言スタプラは良くない。
だってすごく怖いもん。
『飯行きましょう、承太郎さんの金で!』
「清々しい野郎だな…まぁいいが。希望はあるか?」
そうだなぁ最後の晩餐は好きなモンたらふく食いたいなぁ〜〜ッ!承太郎の金で〜!
(連日ンメェものを吐く手前まで食っていたけどぉ〜〜ッ!彼の金で〜!)
『パンケーキ!』
「却下だ。」
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