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『ただいまァ〜〜〜ッ!』





って言っても誰もいないけどォ!

無事帰宅したおれは手を洗って自室へ一直線。承太郎も倣うように手を洗っておれのお部屋に一直線。
いそいそと部屋着に着替え、布団に潜り込む。





『さ、いらしてダーリン。』

「‥‥‥。」




無言でスタープラチナ出すのやめて。

おれが消え入るような声で謝罪の言葉を零したら、ぬるりとスタープラチナは姿を消した。殴るぞと口で言われるよりずっと怖かった。






『あ、それ戻ってきたら洗濯するんでそこらへんに投げといてください。』




たぶんしばらく洗濯しないけど。
匂いなくなるまで嗅ぎまくるけど。

しかしお前らアニメやドラマの人間どもはどうして上着を脱ぐとき手をクロスさせて下からバッ!って脱ぐの? バッ!て。
俺は袖から腕を抜いてって健全にぬぎぬぎするけど、いい男ってそれやんないと死ぬの??






「おい名前、あっちを向いていろ。」

『恥ずかしいんですか。』

「…テメーが吸血鬼みてェな目で見てるからだ。」





WRRRYYYY!!! ってバカァ!

承太郎を食べたいって目で訴えてだとでも言いたいのッ?! おれをゲイフィルターかけて見過ぎなんじゃあないかな!!

なんべん言っても分かんないから言わないけどゲイじゃねェーーーんだよッ! むしろおれを惑わせた承太郎が魔性のゲイなのでは?!(言わないけど。言わないけど。)






DIOの手下みたいな顔してるのかと思って早とちりしたけど、そもそも吸血鬼どもと戦ったのジョセフだし単純におれが飢えてる顔してたんだろうねごめんね。してないけどね飢えてる顔、してないけど。

そう心の中で謝罪を告げて、おれは尚もまじまじと承太郎を見据える。

おれが来てから別に筋トレしてるようでもないのに、なんなのその引き締まり過ぎたボディは。食事も同じだし、仕事もむしろデスクワークじゃん何そのボディ。







『そういえば承太郎さん、朝はイヤでも目が覚めるって言ってましたよね。寝れます?』

「年寄り扱いするんじゃあねえぜ。」


『腕枕し』
「いらねえ。」
『子も』
「いらねえ。」




ヒトの話はちゃんと目を見てさ、相槌を打って訊いてあげると人間関係うまく運ぶと思うんだよね。

そこいらにはそうそう居ない極上のイケメンだしそりゃあ好かれたくもない人間まで寄ってきて、なんとかお前と上手いこと人間関係築きたいスタンスで鬱陶しいかもしれないけどさ。かくいうおれも人間関係構築したい内のひとりだけどさ。
でもそういう下心の有無を抜きにしてももっとヒトの話に耳を傾けた方が上手に立ち回れると思うしもっと人生イージーモードだと思うんだよね。

(くどいようだけど、おれはもっと言葉のキャッチボールを楽しみたかったんだよ!)






『まだお昼過ぎだし、向こうで目が覚めたら夕飯時かなぁ。』

「さっきからメシのことばかりだな。」

『あ、失敬な! 同じくらい承太郎さんのことも考えてますよ!』



「そうか、ならずっと考えていろ。」
『おえッ‥‥』




トキメキえずきするから本当やめてやめないで。

スルーどころかカウンタースキル身に付け始めて鉄砲は数打ち派のおれとしてはダメージがデカすぎる。
おれの勘違いかもしれないけど、その冷たいだけじゃない言い方なんなの? ちょっと優しい声出すのなに??




おれが吐き真似のリアクションを取ったと思っている承太郎はそういう反応でいいんだ張りに少し笑みを浮かべてるけど、そうじゃねーから。コレおれもお前に会って初めて発現した“トキメキえずき”たるものだから。

そうして着替えを終えた承太郎がのすのすとベッドに上がってくる。
幸いおれはお前のカラダ目当てじゃないからな!狭いベッドにふたりで密着したって何ともないんだぜ!

(これでフルボッキしたらさすがに人間やめます。)






『 ‥‥‥ 。』




なんともなくないスーパーせまい。

そりゃあそうだよシングルだもんおれのベッド。承太郎ひとりでも溢れるよシングルとか。

あまりの狭さに仰向けになることすら叶わないので、おれは承太郎と同じように横向きになって彼の大きな背中にくっ付いている。それはもうぴっとりと。





『クンカクンカ…!』
「嗅ぐな。」
『ムリでクンカす…!こんな近クンカクンカクンカに…ッ!!!』




このフレーバーにおれは射止められてしまったと言っても過言じゃないんだぜ…

ああこの嗅いでも嗅いでも足りない感じ! ねこカフェでねこ大好きで触れるけど抱っこはできないみたいな、もっと感じたいのにできないみたいな!このもどかしさッ!!






「反対向け。」

『な、なんて殺生な…
おれがこうして引っ付いてないともしかしたら承太郎さんがこっちの世界に置き去りになってしまうかと思って、おれは…ッ!』





そんな訳はあるのかないのか分からんが、昨夜そんなに寄り添って寝た覚えはない。ので、たぶんここまで密着する必要はないと思う。

おれと同じシャンプーとボディーソープ使ってるし朝から一緒にいたから香水なんて付けようがないのに、この、ヒトを惹きつけて止まないフレーバーは何なんです?いままで変なヒトにストーカーされたり誘拐されそうになったりしなかったの??

(ああ、返り討ちかそうか。)






「確かに、それは困るな。」

『あ、あの、あのあの…ッ!』





返り討ちだァ〜〜〜ッッ!!!!


事もあろうに承太郎はさっきまで俺に向けていた背中をくるりと向こうにやって、おれの方を向いている。
それはもう鼻と鼻が触れ合いそうな距離で。吐息なんかもかかっちゃうくらいの距離で。



そうして案の定おれはド赤面をしながら、彼におれの息がかからないように咄嗟に両手で口を覆った。





『うぉっふぉうおうふぉふぁえふぉおお!!』

「やかましい、寝るぞ。」




やかましいじゃ!!ねーーよ!!!
こちとら心臓がやかましくて血管パンクしそうだよオイコラまぶた下ろすんじゃないおれが悪かったからァ!

こんな間近でまぶたなんて下ろしてなんなの?! おれが真性のゲイだったらチューしてるけどいいの?!!
幸いおれはノーマルだけど承太郎は人智を超えたイケメンだし現世で甘やかされたおれの理性なんて脆いものかもしれない…



このままではマズイ。






『…ッあ、あっち向いてくださいヨォ!!!』




意を決して放った声はなんとも情けなく上擦ってて、目を閉じてたっておれが焦りに焦ってんのなんてもろバレ。

それでも眉ひとつ動かさない承太郎におれは完全敗北を喫し、自らが彼に背中を向けることにした。




さすがのおれでもあの状況下で眠れる自信はないし、あのまま向き合ってたらきっとゲシュタルト崩壊を起こしてフルボッキしながら無理矢理チューしてたかもしれない… 魔性すぎるぜ承太郎…ッ!
(決してそんな気は起こさないと自分を信じることすら危うくなってきています。)

尚も落ち着かない心臓に手を当てて、長い深呼吸をひとつ。おれもまぶたを下ろす。









『おやすみなさい、承太郎さん。』

「ああ… おやすみ、名前。」





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