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よぉ〜〜し、物事を整理しよう。




腸と膀胱の整理が済んだところで、俺は温かい便座に座ったまま碇ゲ◯ドウばりのスタイルで脳みそを回転させる。







まず、俺はゲイじゃない。

そんなの世界の常識だし俺がゲイならとっくの昔に承太郎にボッキしてしまいます。

ハイッ論破〜〜! 次だ。






承太郎は本気で俺をゲイと疑っているのか、わざと疑ってるフリをしてるか。

後者だったらサイコーにタチ悪いし、万一それで俺が新しい世界の扉開けたらどう責任取ってくれるの?!








『(俺が変なのか…?)』







さっき俺の中で確かに浮かんで出た疑問符が、どうにも胸に引っかかってる。

妙〜〜に意識してしまうのは確実にあの人が、思わせぶりってワケじゃないけど… 前と違った顔を見せてくれるからっていうか…



ンハッ…!



これって心を許してきてくれたって事なのでは…!
でもそうだとしたら絶好のチャンスを踏みにじった感が尋常じゃない信じたくない誰も信じない。







『論点ズレたァ!
あ〜〜くっそぉぉ〜〜ッ!』






未だに温かい便座と生尻を合わせながら、バタバタと地団駄を踏む。

(尻はとうに拭き終わったし、俺が解き放ったブツは遥か昔にセンサーが察知して連れ流していった)








俺と彼の間に何とも言えない雰囲気を作り上げてしまったのは、どっちの所為かってより、たぶん互いの悪ふざけだ。

いつまでも引きずると余計にリアリティ増しちゃうし、さっきみたいに必死こいてると逆に怪しまれるし…





『いい加減抱いてくださいよ、って… 』





消え入るような声で復唱したのは先刻の失言。

動揺したにしてももっと間違え方あるだろ的確すぎるだろ… ああ、悩みすぎて腹壊しそう。(日本人は胃腸が弱い)












コン、コン、コン、





ゆっくりと、控えめに響くノックの音。

3回ノックしてくる辺り、個室を明け渡せって要請ではなさそうだ。





『出ます出ます。』





既に尻を拭き終え便座の温かさに浸っていた俺は、急かされるように立ち上がり下着とデニムを纏めて腰まで引っ張り上げた。



あんな雰囲気で彼を残して便所に駆け込んだ手前、何よりあの発言の手前。どんな顔をしながら個室を出て行くのがベストなのか。

スッキリしたぜみたいな、何食わぬ顔でいけばいいのか。







「そのまま聞いてくれ。」

『えっ、あ、はいッ。』





なななにいま扉開けようとしたんだけど、ヤダこわい声色が真面目!

気持ちを知った以上面倒みれねえとか言われたら俺どうするの露伴に頼るしかなくなるんだけど!




虫食べたくないヨォ〜〜〜!

承太郎の経済力に甘えてサイコーのランチやディナーを無遠慮に楽しみ続けたいのォ!!











「キミの気持ちに気付かずにいて、すまない。俺は色恋にはあまり聡くなくてな… 無意識に傷付けた事もあったろう。」


『…… ん? 』






ガチの返答だ。


どうしよう、本気のやつだ。





見て見ぬフリをしてほしかったよ!
どこまでも誠実なヤツだよお前は!

逃げ場がない絶望感の片隅に、彼にこんなことを言わせてる背徳感とか優越感とか、いろんな感情がごちゃまぜになる。







「名前の愛情表現はいつも素直だ。それには不思議と、微笑ましい気持ちになる。」

『承太郎、さん… 』







普段ならぜったいに聞けない、承太郎の腹の中のホンネ。

俺なんかのあんな雑な告白をそんなに真摯に受け止めてくれたと思うと、申し訳ないのが半分。





ものすごく、愛しく感じてきてしまったのが半分。








「俺はおそらくキミと同じ感情ではないが… この数日を共に過ごして、少なからずキミを大切に思っている。」






呼吸を繰り返すことすら困難に思えるほど胸が痛むのは、彼にこんなことを言わせるつもりじゃあなかった罪の意識からなのか。

はたまた、別の感情からか。







「キミさえ良ければ、あと少しの間」
『ダメですよ承太郎さん。』


「…すまない。

これは俺のエゴだ。わかってる。
だが何だか… キミが離れていくと考えると、ひどく虚しい。」









そんなの、十分すぎる答えだ。


彼がどんな人間か、この短期間でもよく分かってる。どうでもいい人間にこんなこと口が裂けたって言えるようなヒトじゃない。

ただの失言のはずだったのに、


























『承太郎さんが好きです。』






自覚してしまった、ずっとずっと奥底で芽生え始めてた感情。

きっと何もなかったんじゃ気付くはずもなかった恋心に、俺は気付かされてしまった。







『そんな俺に、そんな甘やかすようなこと、言っちゃダメです。』







そっと鍵を外して音もなく開けた扉の先には、今までで一番頼りない顔をした彼が立っていた。

小さく歩み寄ると、彼の指先と目蓋がピクリと反応を示す。









『傍に置いてください。
あと、少しの間。』



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