×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

18








『ハンフ〜〜〜…ッ』





この盛大なわたしの鼻息。



だってすごいはしゃぐんですよ。
隣で目ェキラッキラさせて、時にイルカの生態とか豆知識なんか教えてくれたりしてさァ!

こちとらイルカショーってより承太郎ショーだよ!(?) こっち来てから結構無邪気だよね、嬉しいけどね。






「よく躾けられてるな。 飼育員にも、よく懐いてる」

『俺も承太郎さんによく懐いています。』





この少し生臭い空間にもショーを観ている間にすっかり鼻が慣れてしまったけれど、相も変わらず承太郎は別格だね… なによりもステキな香りがするね…

擦り寄らんばかりに彼の肩口に顔を寄せて匂いを嗅ぐ。

すると彼の方まで顔を寄せてくるものだから、鼻と鼻の先がぶつかりそうなほど間近で、それは俺の脳みそを掻き乱すには十分な破壊力で。






「少しは躾けた方が良いかもな。」

『うおえっ…!』






びっくりとトキメキが許容オーバーしてえづいちゃったヨォー!

さっきからなんなの俺がいちいち大仰に反応するから遊んでるの?! だとしたら趣味悪いよ、ヒトの純情に付け込んでおえぇっ…!!







「一丁前の反応してくれるじゃねえか。 俺に飼育されるんじゃあ不服か?」






そう言ってイタズラな微笑みを称えて俺の頬をぺちりと叩く承太郎。

俺のトキメキ嗚咽をノリでえづいて見せたと勘違いしてくれてるようで…
はーーそうですか。全くの無自覚ですかアナタ!



(好都合だけど、マジで消化されかけのマックとか出てきちゃうし、これ以上高鳴らせられたら小半世紀くらい時間戻しかねない。)







『飼育って承太郎さんスケベー! AV見過ぎですよ!』

「そんなAVあんのか…?」

『無知なフリをして俺を貶めるのはヤメテください。』





こちとら大好物だよ飼育モノ。

引く手数多すぎてAVとか見る必要すらないとかそういうこと? ヤりてえ時にヤるとかそんな感じ??

最〜〜ッッ低ね!!!
(最〜〜〜ッッッ高に羨ましい)














俺はそっと彼から身を離して、おもむろに立ち上がる。

彼も倣うように座席から腰を上げ、「行くか。」と出入り口の方へ歩を進め出した。





『すんすん。』





後ろをついて歩くと大スキな承太郎の香りがほんのり足跡を残していて、その匂いを残らず鼻で収集しながら俺も歩を進める。

たとえ変態と罵られようとも、この匂いの粒子を他のヤツに渡すワケにはいかない! 一粒たりともなァ!!







『へぶっ! ちょ、いきなり止まらないでくださ… あ、いい匂い。』






彼が急に歩みを止めるものだから、俺は急停止できずに大きな背中へ衝突。

すると途端に、さっきまで回収していたほのかな香りが確かなものとなって鼻孔をくすぐり出す。



着てるのは俺のシャツのはずなのに何がどうなってこんなフレーバー発してんの! それ返してもらったら俺しばらく洗濯できないヨォ…







「まずは無闇に人様の匂いを嗅がないよう躾けた方が良さそうだな。」

『勘違いしないでください! 承太郎さん以外にこんな事しないですッ!』

「ただの4日で何を覚えてんだテメーは…」




深い溜め息を吐いて、また彼が歩き出す。













そのただの4日を、そして残された4日を、俺がどれだけ掛け替えなく思っているか、知る由もないよなぁ。

スタンドの抵抗がないこの世界なら、時を戻してずっと承太郎と過ごすことだって出来るだろうけど…
ひとりで共有できもしない思い出作ったって意味ないし、俺のエゴで世界の時間を狂わせちゃうのは良くない事だろうなっていうのは何となく分かる。







『…承太郎さん。』






この現象だって、いつまで続くか分からない。

もしかしたら明日寝て起きたら彼はいなくて、まるで今までが全部夢だったみたいに彼の痕跡は俺の記憶にしか残っていないかもしれない。






ジェントルマンとして優しくしてくれる、気遣ってくれる、傍にいてくれる。

その度に俺は距離が縮まったような気持ちになって、どんどん慕っていってリスペクトなんかもして、その分、







『(俺がしんどくなるだけなのに)』








振り向いた彼に咄嗟の作り笑いを見せて、そそくさと隣に並ぶ。

せめて今日が最後になったとして少しでも悔いが残らないように、楽しかったって笑えるように。










『このクリオネ、共喰いしませんね…』

「…極限状態じゃなけりゃあ、クリオネだって仲間を喰おうとは思わねえだろう。」

『極限状態になったら承太郎さんは俺を食べますか…?!』





円柱型のクリオネの水槽に張り付きながら、おずと承太郎を見上げる。

水槽の薄明かりに照らされた彼の顔はだいぶ見慣れてきた俺ですらちょっとビクつくくらい厳ついしカッコいい。

どの角度でもサイコーにカッコいいよッ!







「お前を喰う位ならテメーの足でも喰らうから安心しろ。」

『きゃー! 赤足のジョジョ〜〜!』

「誰に吹き込まれたんだ、その呼び名。(赤足…?)」





近頃その呆れた表情すら愛おしいからね… 快感にはまだ至ってないけど、その悩ましげな表情ディ・モールト・ベネッッ!

(急激に拗らせてきてるのは常々実感している)







『はぁ〜〜… 好きですチクショウ。』

「脈絡がない上に、その語尾についてんのはどういう了見だ。」

『好きすぎてクヤシーんすヨォ〜〜! 助けて… うっうっ… 』







いまがこんなに幸せなのに、俺はとっても欲張りです神サマ。

願わくば、少しでも長く、この日々が続きますようにって。
1分でも、1秒でも、0コンマ1秒でも。





『(たのむぞ流氷の天使。)』




.