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「次その名前で呼んだら、母親のお腹の中まで戻してやるの」
めちゃくちゃこわい何コイツ…!
だってお前がそんなブリブリした名前付けたんじゃん… みんな意味とか意思を込めて自分でスタンドに命名してんのに、お前が端からブリブリ言い出すから!
心を持ち直せオレ。
このテディベアが王様何様ブリブリ様だからなんだって言うんだ。俺はこいつの主だ!マスターだ!お代官様だ!(ちょっと違うかもしれない)
どうせならおっぱいが大きくてエロいお姉さんが良かったよ! 何もかもの希望を打ち砕きやがって!!
『俺が過去に遡ったら、お前生まれてこれないかもしれないよ。俺が承太郎さんに会えたのなんて、万に一もない奇跡みたいなモンだし…お前が生まれたのも然りだろ。』
生まれて来たくなんてなかったの!とか反抗期の息子みたいなこと言われたらどうしよう。
べっ、別に俺だって好きでお前のこと生み出したワケじゃないしーー!ふんー!
「それなら、試しに戻してみるの?」
逆 効 果 !!!
俺のばかばかばか!子供は好奇心旺盛なんだよましてやこのクマ野郎だよ!
確かにこれまでの人生そんなに誇れるようなモンでもなかったし、俺は未だにフリーターでパッとしない毎日送ってはいたけど…けど!それはこの間までの話で!
『(せっかく会えたんだ、このひとに)』
いっしょに食べるメシはどれもサイコーに美味くて(料理が一級品だったのもあるけどそこは置いといて)
急にポッと現れた自分は未来人ですとか言い出すヤバい奴のこと、信じるの一言で面倒みてくれて
思い出作りとか言いながらついて回るこんな俺を、溜め息吐きながらも傍に置いてくれた。
「やれやれだぜ…
一発ぶん殴ってやりたい所なんだが、お前が無傷では済まないからな。」
『ハッ…! それです!
俺を殴ってください!!一思いに!さぁッッ!!!』
稚魚イリュージョンですら起こらなかったどよめきが、周囲でちらりほらりと聞こえ出すのが分かった。
ごめんね承太郎。
すごく名案だと思ったからすごく大きな声を出してしまったんだけど、すごく恥ずかしいしすごく後悔している。
居たたまれないのか伏し目がちな姿も色男だよ…!
「テメーのスタンドも操れねぇんじゃ、おちおちあっちの世界にも置いておけないな。」
『えっ!』
でも俺寝たら強制的にあっちの世界に連れてかれちゃうんだよ不可抗力だよォ!?
も、もしかして財団のチカラをフルに使って俺を隔離しようとしてるのか…?! 24時間休まず謎の点滴を身体に流し込み、寝ながら起きてるみたいなノンレム状態のままで俺を隔離しようというのか!!!
『んふ、んふふ……』
ぜってーヤだ。
だってだって! まだ彼女ほしいし結婚してーし、仗助ぎゃふんと言わせてねぇし露伴のバンダナのギザギザも増やしてないし…靴下入れてる衣装ケースの底に隠したオトナのDVDだって処分してないし、俺がいなくなったら母さんが泣く!!!
隔離ダメ、ぜったい。
『おい排便クマヤロウ!俺の精神エネルギーの分際で王様気取りか! 俺はそんな器じゃないぞ!!』
自分で言ってても一抹の悲しさがあるぞクマヤロウ!
俺の渾身の売り文句を耳にするなり、わなわなと震え出すクマのぬいぐるみ。
そうだろうそうだろう生まれ持った名前をさんざっぱらバカにされたら腹も立つだろう!(幼稚園の時に絶対にやってはならないと先生に教わった事のひとつだ!)
「先祖が産まれ落ちる前まで戻るといいの…! プレーリー・バック!」
ついさっき水族館中のお魚さんを稚魚らせた技を声高らかに発動させるテディベア。
否、発動させようとしたテディベア。
『俺がダメって言ったらダメだよ。』
魚は穏やかに水槽を走り回る。
そりゃそーだ! 俺が封じたからなァ!
お前の幼稚な怒りなんかより、俺の承太郎さんへの愛情のほうが一億万倍強いんだよ!!!!!
そうこれがスタンドの本来あるべき姿! 自立型といえど、俺の意思に沿ってチカラを発動する!
いわば、絶対王政!
ンンン〜〜〜! 気持っちイイィッッ!!
「遅いんですの名前。僕を扱うんだから、チカラの抑制くらい出来てもらわないと困りますの」
あ?
「でも、上々ですの。」
(^-^)
『…なんで俺がチカラ封じ込めたのに、お前がしてやったみたいな顔してんの? なんなの?』
ぬいぐるみのくせにやたらと表情豊かでホント引き千切りたい思いですわ。
呆れっツラ全開で俺に嘲笑を見せつけたこのクマヤロウは、どうやら今の今までマスターであるこの俺を欺き、試していたようです。
「キミの時間を浪費しないように、わざわざ時間を戻してトレーニングに付き合ってさしあげていたボクに感謝してほしいんですの。」
『妙にカラダしんどいと思ったらお前か!!』
いつ突っ込もうかと思ってたけどその口調のまま敬語にされると急にお嬢様感強くてキモチ悪いよホントにキモチ悪い!!!!
…いやでもそのお陰でバイトもなくなってこうして承太郎さんと水族館来れてるし、あまり強く出られないボクがいます。
『…よろしく、ブリスル。』
恐る恐る手のひらを差し出すと、クマは小さく笑っ(た気がしました) てお辞儀をして、俺のそれに丸くてふわふわの手を乗せた。
「よろしくお願いしますの。名前」
とりあえずは、一件落着…なんだろうか。
握り返してからブリスルの手を離すと、後ろから大きな体温がそっと俺の頭に触れた。
「お疲れさま。よくやった」
その一言でこれまでのわちゃわちゃが急にどうでも良くなって、こんなにも満たされてしまうのだから恐ろしい。
ねだるように承太郎の手のひらにぐりぐりと頭を押し付けると、やれやれだぜと言った風な顔を俺に見せつけながらも更に頭を撫でつけてくれて。
優しいな、愛しいなぁ。
『(胸がきゅーってしてる…)』
ああ困ったな。危うく恋ではないかと思ってしまうぐらい、俺は彼を慕っているようです。