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水族館に到着しました。


その後は特にクマが暴れたり俺が暴れたりはなく、とても平和に、平和にドライブ気分で時が流れて…平和すぎてとても疲れた。





「水族館初めてなの!魚好きなの!たくさん食べるの!」

『そういう場所じゃないんだなー水族館は。食べちゃダメだよ〜』





このクマ野郎の相手は子守りに酷似している。純粋な面倒臭さを感じる。

俺は我が子以外愛せる気がしない。






『承太郎さん。』
「俺に振るな。」

『…違います、ちょっくら質問ですよ。
何で喋ってんですかウチのスタンドくん。おかしいでしょ。』




別に押し付けようとか思ってねーし!どうせ助けてくんないの解ってるし!

スタンドってこんな使い手に迷惑かける存在だった?! 俺もともと子供の扱いとかあんまり上手くないしさ…もうイヤよ…






『行きましょう。おれ決めました、コイツをガン無視します。』




そうだ、コイツは確かに子供じみているが子供ではない。

冷たくしたからといって泣き出す人間の子供とは違うのだ。(たぶん)







「ねーねー、ボクも一緒に泳ぎたいの!」
『・・・・・。』
「ねー!ボークーもー泳ぎたーいー!」



心を鬼にするのよ俺。

そう、これは教育だ。
このクマ野郎に分からせてやらにゃならんのだよ!マスターはこの俺だとなぁッッ!




「…いいのか?」
『いいんです、躾です。』

「ねー!!どうして無視するの!」





そもそも、そもそもだ!
俺はお前が俺と承太郎さんのふたりきりの思い出作りに割り込んできたことにわりと腹を立てている。

こっちの世界で承太郎さんと過ごせるのは最初で最後だっておかしくはないし、害こそなければいいものをコイツに振り回されてばかりときたもんだ。これが腹を立てずに居られようか!








「無視なのー!!ぷんー!」

『承太郎さんって魚なら何にでも詳しいんですか?』
「あ、ああ…主にヒトデだな。ヒトデの研究をしている。それより、お前のスタンドだが」
『ヒトデ! うひー俺あいつらダメです。じっと見れられなくて…』




ンン〜〜ッ!承太郎さんは優しいなあ!

だいじょうぶ、俺だって心優しい日本男児さ。コイツがちゃんとこれまでを省みてさえくれれば…





「あまり刺激するとまた」

「怒ったの!!!プレーリー・バック!」

『アン?!』



ヤダなにその技名みたいなの!

漫画読むたびに思ってるけど、必殺技使うときとかわざわざ説明的に技名口にするよね!相当気持ちいいでしょうねアレ!







ブリスルと名乗ったクマの人形に背を向け続けている俺と、大きな溜め息とともに片手で頭を抱え出す承太郎さん。

頭痛いのかな、まだ仕事の疲れが残ってたのかな、この世界の空気がおいしくなくて病みかけてるのかな、なんて思考を巡らせる。




…場合じゃねえ。








『ちぎょ…』





始めに言っておくがこれは俺の鳴き声ではない。




赤ちゃんが泳いでる。

いや、赤ちゃんは泳げないクロールする赤ちゃんは見たくない。

産まれたての魚が、
稚魚が、






『…早く戻して。』

「ヤなの! ボクを蔑ろにするとこうなるのっ」





アアンッ、ぶち切れそう!


どうやら力が使われたのは目の前の水槽だけのようだ。オープン直後でぱらぱらと数少ないお客さんたちは、突然の出来事をサプライズイリュージョンか何かと勘違いしたらしく幸いざわめきは聞こえない。

が、従業員が気付くのも時間の問題だ。

くっそー!奔放なのは結構だけど、人様に迷惑かけて平気な顔でいるやつほど腹立たしいものはない!オレはおこだぞ。







『承太郎さん…ごめんなさい。』

「謝る事じゃねえさ。
このクマはテメーの生命エネルギーが具現化したモンでな。謂わばお前自身と言ってもいい」

『俺自身?! やめてくださいよ俺こんなに性格悪くないでしょッ!』




待って待って?! 承太郎さんから見た俺ってこんなにワールドイズマイン?
携帯からウェブサイト観てたらやたらに出てくる、少子化で国から直々に国内の女のコへの強制種付けが許可されてレ◯プし放題のおじさんみたいに見えてる???

だからこんな歪みきった性格のスタンドが生まれたとかそういうこと…ッ?!








「身投げでもしそうなツラしてるとこ悪いが、そういう事じゃねえ。」

『じゃあどう見えてるんですか!あなたの瞳に、わたしはァ!!』

「なんで泣いてんだ…」




確かに布団潜り込んで一緒に寝たり、仗助への復讐とはいえ急に腕組んだりしたけどさァ!あんまりじゃんかァ!

じゃあなに!?俺の愛カケラも伝わってないの?!!?!






『俺はこんなに愛してるのに!』

「だから何の話をしてんだ…鼻水が出てるぞ。
よく聞け名前。テメーの精神をコントロール出来るのはテメーだけだ。わかるな?」




ほほう。つまりは俺の豆腐メンタルによってコイツの制御が効かずに暴走しちゃってるとかそういう訳かな?!

ンンン〜〜!わかるけど、わかると出来るは別だなって。そんな急に強い子にはなれないかなって。



鼻水で溢れかえった俺の鼻の穴は機能を果たさず、ずびずびと啜りながら口呼吸。そしてついでに深呼吸。

ヨシ。







『おい排便クマヤロウ!今から産まれたてのお前にモラルというものを教えてやる!』




承太郎が俺なら出来ると思って助言してくれたんだ…!

ここでやらなきゃ漢が廃るぜえええい!てやんでええええ






「次その名前で呼んだら、母親のお腹の中まで戻してやるの」




えっ、このクマこッッわ。

なるほど勝てる気がしねえ。