腹が減っては。 T






広海親衛隊が去った後の教室は、さる露米の冷戦を思わせる空気だった。

恐らくこの教室中の人間が、広海とのことをまだ問いただしたくて仕方が無いいないはずだ。だって最後にあんな爆弾落としたんだから。
·····だが、俺の前の席の広海はそれを断固として拒むフォースをすごい感じるので、誰一人として口を聞かない。

正直な話、(俺に勇気があったなら)今すぐ声高に「俺は無実だ」と叫びたかった。が、いかんせん前の席から投げ込まれた紙に『いらんこと言ったら犯す』と書いてあったのでそれも無理っぽい。


「はーい。じゃあ授業はじめるよ·····って、なにこの空気?誰か死んだ?」


重苦しい静寂は一時限目の数学担当の安藤先生により破られた、が、それに続いて言葉を発するものは···誰もいなかった······

再び重苦しい沈黙が訪れる。
安藤先生もただならぬ雰囲気に息を飲んで、教室の中の空気をどうすべきか考えているようだった。

いやーーほんとすいません。
5割···いや7割······9割くらいは俺の前にいる甘いマスクのイケメンのせいなんですよ。まじで。


「先生ー!前川くんが体調悪そうなので保健室いってきまーす!」


胃がキリキリと痛みだした途端、さっきまでに眠そうにしていた高見が手を挙げて立ち上がった。

え?俺····??いや別に体調は悪くな····──いや全然絶好調で悪かったわ。



「え…?あ、うん。分かった、早めに戻ってきてね」
「しっ失礼します…!」


俺はバッと席を立ち上がり高見の元に駆け出す。
高見は安藤先生に適当に返事をすると、「じゃあ行こ!」と行って教室から出た。


「うおお高見!ありがとな!」
「····ん?え?何が?」
「····何って、俺のこと助けてくれたんじゃないの…?」


俺の言葉にきょとんとする高見は、うーんと顎に手を当てて何かを考えた後に、「あー!」と大きな声を上げた。


「そうそう!俺助けた助けた!」
「····いや、お前ほんとか?」
「うんうん。ホントだってー。····だから昼飯奢って!」


パン、と両手を顔の前で合わせてニカッと笑う高見の顔を危うくぶん殴りそうになる。うんうん。そうだ、こいつはそういうやつだ。
俺に飯奢らせるためだけに教室から連れ出すような奴だよ!


「一瞬でもかっこいいと思った俺が馬鹿だったのかなあ」
「え?俺一瞬だけじゃなくてもかっこいいだろ?」
「オッケー分かった、馬鹿はオメーだ!」


「ぶぅーなんだよそれぇ」とブスくれる高見を尻目に食堂に向かう。こういうのは基本無視するのがいいんだ。多分。




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