来訪者U




「···広海くん。本当なの?」
「───うん、ホント」


広海が外面用の愛想のいい笑顔を浮かべそう答える。
男はわなわなと震える拳を机に叩きつけ、俺の方をキッと睨みつけた。


え···??なんでまだ怒ってるのこの子?俺ちゃんと寝ただけって言って─────



寝た?!?!?!



「お前だけは····生かしていてはダメだ···!!!」
「待て待て待て!!間違った!!寝たって言うのはそういう事じゃなくてほんと普通に寝ただけで··──睡眠!そうそう睡眠を取っただけで」
「マエカワソウタァア!!!」


男が拳を振り上げ完全に俺を殴る体制に入ったその時、俺たちを取り囲んでいた人混みの中から金髪のイケメンが出てきた。


「ちょっとぉー暴走しすぎだよー····」
「ぐっ、やめ···離せ!降ろせーー!!!」



···え??何??誰???



さっきまで俺の周りでギャンギャン吠えていた男を軽々と担ぎ上げ呆れたように溜息をついたのはフェミニンな顔をしたヤンキーっぽい人。


「もしかして宮埜くん今日も屋上にいた?サボってたのに、呼び出してごめんね」
「い、いえいえ!笹井クンのためならたとえ火の中水の中ですよお!!」


広海が男に向かって笑顔でそういうと、金髪イケメンは嬉しそうに頬を染め無駄に洗礼された敬礼をした後、くるりと方向を変え俺の方を向いた。


「えっと···ソウタクン、だよね?オレは笹井クンの親衛隊副隊長の宮埜助太で、この子は隊長の松尾かれん。ちょっっと暴走する癖があってねー…悪い子じゃないんだよ?だから今回は許してあげてね」
「は、はあ····」
「おい!!離せ!!担いだまま話すな!!」
「はいはいちょっと待ってね。えっと、ソウタクン。これからはこんなことないようにするけど、過激派にはくれぐれも気をつけてね!じゃあ笹井クン!オレたちはここで失礼します!」
「か、過激派·····??」
「ご苦労さま」
「いえいえー!では!!」
「うううぅ!!おーろーせー!!」



イケメンもとい宮埜さんは、ハイエナの王を担いだまま教室から出ていった。
········というか、窓から出ていった。


「えーーー···えーーーーー···???」


いや···俺が教室に入ってきてからいったい何が起きたの····??あまりにもトントン拍子すぎて全く頭に入ってこなかったんだけど。


「あ、みんなももう座ってて」


困惑する俺を尻目に、広海は周りで立ち尽くすしょぼくれたチワワに声をかける。
するとチワワは水辺に戻った魚のようにビチビチと自分の元いた場所に帰って行った。




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