来訪者T



「あ、宗太!よかったなーギリギリセーフだぜー今日も相変わらす惚れ惚れするほど普通の顔してんな!」
「うっせえわ!!」


教室に入った途端チャイムがなり、滑り込みセーフで遅刻を免れる。後ろの扉の近くの席に座る高見が整わない呼吸のまま席に座り、前の席に座る広海の頬を後ろから引っ張る。


「お前ェー!なんで置いてくんだよ!!」
「ほはへはおほはっははら。ふーはひはひ、はらへ」

『お前が遅かったから。つーか痛い、離せ』

口の動きだけでも偉そうな広海にイラっときたのでよりいっそう強く引っ張る。


「お前が!起こさないから!!だろうが!!」


ぐぬぬぬ、と柔らかい頬を引っ張れる所まで引っ張ってから離すと、広海はギロりとこっちを睨んでから「····バカだバカだとは思ってたけど、ほんと救いようのないバカだよね。周り、見てみなよ」と小さい声で囁いてきた。



···はあ?周りって、どいういう···───ヒッ!



広海の視線が示す方、つまり俺の周りを見ると、小さなチワワのような男共がまるで親の仇を見るような目で俺のことを見ていた。


え···?!いやいやなんで俺がこんなに睨まれてるの?!え、俺なんかしたっけ?!怖い怖い怖い!!!


「···ひ、ひろうみ、お、俺なんかしたっけ···?!」


未だに殺意の篭った熱い視線を向けてくるチワワもといハイエナが怖くなり、広海の肩をぎゅっと掴むと、広海は呆れた声で「それだよ」と言った。

それって····え?あ、俺の顔?顔なの??いや顔ごときでそんなこと言うわけないよなー第一このクラスにも俺より顔悪い奴なんていっぱい···いねぇ···!!!


「もうなんなの?どうしろって言うの?整形?それしか道はないの?話し合いじゃダメ?」
「なに勘違いしてるのか知らないけどすぐにでも整形した方がいいよ」
「おいそこは止めろよ!!······えっ。ていうか勘違いなの?」


ホームルームの終りを告げるチャイムが鳴り、教室の様子に気づきながらもダルそうにそれをスルーした山田先生が教室から出ていく。後で覚えてろあの顔のいいおっさんめ!

俺が山田先生を睨みつけたと同時に、他の教室から来た奴らが例のハイエナ集団に加わり、固まりになって俺の席の周りににぞろぞろと集まり始める。

意味も分からずに頭の上にクエスチョンマークを浮かべていると、ハイエナの中にいたやけに目立つ赤いパーカーのこりゃまた可愛い顔の男がイライラを隠そうとしない声で話しかけてきた。


「ちょっと!お前!!」
「やっぱり俺なんですね···」
「ハァ?お前以外にいねーよ!ダァホ!」


可愛い顔を鬼のように歪めた男は俺の机を両手で強く叩いた。


「───アンタは広海君のなんなんだよ!!」
「······え?なに···とは···???」
「しらばっくれんな!ここにいる全員知ってるんだ、お前と広海君が同じ部屋から出てきた事をな」
「は?!い、いやそれはちが····くはないけど違う!!」
「···ふうん···?じゃあどこが違うってんだ?言ってみろ」


鼻息荒く机を叩きまくる男にどうすることも出来ずに両手をあげながら「俺と広海は····ほら!寝ただけだから!!」と叫んだ。



「───·····寝た···だけ····?」



瞬間、教室の中に沈黙が流れる。
ピタリ動きを止めた男がその言葉をゆっくりと復唱した途端に、周りがざわざわと騒がしくなりだした。





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