理事長 U



「失礼します理事長、生徒会長の西園寺です。先程から電話をかけているのですが」


中に入ると、理事長の前に立つ前川宗太と目が合うと、奴はあからさまに嫌な顔をして、ふっと目を逸らした。

ほう、俺を見て顔を顰めた挙句目をそらすだと?いい度胸じゃねえか。

謎の対抗心が芽生え、前川を理事長室から追い出す時に「あとで生徒会室に来い」と伝える。後ろから息を呑む声が聞こえたので、きっと今あいつの顔は俺の想像通りの顔だろう。うむ、そうだろう。驚きだろうよ。俺もそう思う。


「で、西園寺くん。どうしたんだい?」
「···ああ、今回渡された書類に生徒会役員のリコールに関する書類が入ってまして」
「あー、それね。捨てといて」
「わかりま········え?」
「ん?だから、捨てといて?それ」



...コイツは今、捨てろと言ったのか?



いや、俺は何、もいらない書類の処分をしに来たわけじゃない。書類に記入する許可を取りに来たんだ。
つまり俺はあのクソ無能活用価値ゴミ以下の生徒会役員共をさっさとリコールさせようと思ってここに····


「だって、生徒会のみんな。別にリコールさせなくていいでしょ?」
「···は、」
「別に大きな問題もないわけだし、彼ら自身が何をしたって訳じゃあ無いだろう?····だからさあ、その書類、捨てといてね」
「い、いやあの···」
「あ、じゃあ僕この後会食あるから!」


未だにこいつの言ってる意味が理解できずに焦る俺を尻目に、理事長はさっさと出掛ける準備を始める。


──────リコールする必要が、無い?


まあ確かに、アイツら一人一人がなにか大きいことをした訳じゃない。
が、生徒会の仕事をサボるのは立派なルール違反だろうが·····ん?まさか、理事長は知らないのか?

···いや、そんなはずはない。
でも知っていたらなぜリコールさせない。
別に彼らの能力が特別に長けている訳でもないのに、だ。俺一人でも生徒会は回せる。それにこの学校のことだ、あいつらの代わりなんぞすぐに見つかるだろう。
まさか外部からの圧力?いや、どう考えても理事長の方が権力はある。


「ほんじゃまあ、もうちょい頑張ってね!西園寺くん」
「ちょ、まッ───!」


バタン


俺の停止の言葉も聞かずに、理事長が部屋を出ていく。

····理事長室に生徒置き去りにして出ていくなよ。無用心にも程があるだろ。俺が荒らしたらどうするつもりなんだあのジジイ。

腹立つからなんか荒らしてやろうと理事席の前に立つと、机の上に『勝手にぼくのもの触っちゃダメだよ!^^ 皆の理事長より』と書いた紙が置いてあるのが見えた。



「····くたばれ、クソジジイ」



俺はその紙をグシャグシャにしてゴミ箱に放り投げ、さっさとこの居心地の悪い理事長室を後にした。







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