生徒会長 V



「はぁ、はぁ···くっそ···」



__何でこんなことに



原因はまあ、花ノ下姫ことクソマリモのせいだと分かりきっている。


風紀室を後にした後、俺は出来るだけ人目につかないルートを辿って生徒会室に戻っていた、のだが。



『あーー!!龍二!』
『うげっ···』
『なにしてんだよー!龍二も遊ぼーぜ!!』
『いや、今は少し』
『ん?なんだ、元気ないのか?』
『······ああ、』
『ダメだろ!ちゃんと元気出せよ!あ、俺と一緒に遊ぼうぜ!そしたら元気になるから』
『いや、遠慮させてもらうよ』
『そんな事言うなって!』


そして始まった鬼ごっこ····もといデスレースのせいで、どうやら俺はこの学園の端の端まで来てしまったらしい。
風に揺らされてザワザワと音を立てる木々に尚更腹が立つ。


「あークソ!とんでもねぇ時間のロスじゃねぇか!」


腕時計で今の時間を確認し、頭の中で現在残っている締切の迫っている書類について考える。そしてそこから今日の睡眠時間を割り出し…


「なんで1日って24時間なんだろうな···」


1人で絶望する。


「···あー······あー···──アーーーーーッ!!!」


耐えきれず、またもや最近の日課である声出し、もといブチギレをキメる。
どうも、猫を被り始めてからは定期的にこのようにどっかで発散しないとやってられないようで。


「大体何なんだよアイツらも一応役員って自覚を持ちやがれクソ共いやそれはクソに失礼だなアイツらは塵ほどの価値もないもんなハハハあーうぜぇ···」


そこら辺に生えてる木をゲシゲシと蹴りながらイライラを口にする。すると、幾分か心のもやもやが晴れていくような気になる。


「つーか親衛隊の奴らも俺のこと心配してるなら頼むから何もしないでくれお前らが俺を心配して生徒会室に来る度に俺がセックスしてるとか思われるしあーもうなんだよこの学校の新聞部員は俺のストーカーか?この際廃止してやろうか?いや闇討ちもありだな…」


先日の校内新聞に書いてあった『生徒会長は色情魔?!』という文字を思い出して腹の底からフツフツとしたものが煮えていく。
そして同時に、我が西園寺竜二の親衛隊長のヘラヘラした顔を思い出して確信犯であろう奴への怒りもつのる。


ていうか原点に帰れば花ノ下が全部悪い。だってあいつが来なかったら役員は普通に仕事して、俺の睡眠時間がわけで、


「クソマリモマジコロス」


いつか絶対、俺の手で。


そう心の中で強く誓った途端、俺の立つ後ろの茂みから物音が聞こえた。誰だ、と口にして後ろを振り向くと、そこには顔を青くした平々凡々の男が立っていた。


「ハ、ハハ···失礼しましたー····」




────これが俺とこの男、前川宗太との出会いである。






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