会長と V



「···はあ。おい、もう出てきていいぞ」
「お、お疲れ様です···」


カギを開けて仮眠室から出ると、生徒会室が何故か台風が通り過ぎたかのようにグチャグチャになっていた。

確かに花ノ下は台風のようなやつだがこれほど····いや、これまさか花ノ下のせいで?あいつはここに立っただけでここまで荒らすことが出来ると?


「····花ノ下すげぇ」


俺がそう呟くと、会長がキッとこちらを睨んで「すごくねぇ!!」 と反論してきた。


「おいお前、ちょっと片付け手伝え」
「···えっ。いや俺片付けとか出来ません」
「あ?いいから黙ってそのプリントまとめろ」


制服のブレザーを脱いで腕をまくった会長は、やる気が出たのかなんなのか、さっきとはまた雰囲気が変わっていた。


「ほんっとに適当にしかできませんからね」
「ん。別にそれでもいい」


目を合わせず返事だけする会長はぱっぱとゴミを拾い大きな袋に放り込んで、散らばった雑誌を紐で縛り、片付けとかよくわかんない俺から見てもプロの動きだった。なるほど、生徒会長は掃除力も高いのか。

とりあえず会長に言われた通りにプリントを雑にまとめる。
大体これでいいかなと思えるほどになった時、後ろにいる会長に目を向けると、さっきまで台風が通り過ぎたかのようだった生徒会室が嘘みたいに綺麗になっていた。


「まあこんなもんだろ」
「せ、生徒会長すげえ···」
「あ?当たり前だろ」


ふふん、と得意そうに鼻を鳴らす会長はどうもうざいと言うよりかはその得意気な感じが妙に似合っていて、逆にイラッときた。

ふと、ポケットに入れたままにしていた携帯が震えていることに気づき急いで取り出すと、某メッセージアプリの上に98と表示されていた。


「げっ」


どうやら全部広海からのようで、内容は大体『早く帰ってこい』だとか『どこで油売ってんの?』とか『宗太の癖に無視すんな』『おいブス』とか·····なんだこいつメールでくらい素直になれないのかよ!!もっと可愛げを持て!!


「どうした?」
「あ、いや、友達が早く帰ってこいって···」
「ああ···そう言えばもう放課後だな」


会長はそう言って時計をみて憂鬱そうにため息をついた。


「···今日は色々とすまなかった。同じ境遇···とまではいかないかもしれねえが、似たもの同士、強く生きるとしよう」
「は、はは····。···えっと、会長も頑張ってください。あ、無理しない程度に!」


苦笑いを浮かべる会長にそう笑いかけると、会長は面を食らったように目を見開いた後、


(う、わ)


思わず、見蕩れてしまうような美しい笑みを作った。


「───じ、じゃあもう行きますね」
「ああ、じゃあな」


俺は多分、まだ火でっているであろう顔を隠すようにくるりと体の向きを変え、足早に生徒会室から出ていった。








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