会長と U




「とりあえずお前は、」


コウメ太夫以外の太夫を考えていた俺に、会長が何かを言いかけた瞬間。
廊下の方からけたたましい足音が聞こえてきた。それと同じくらいのタイミングで、会長の携帯も鳴り出した。


「ッ!···クソッ!あいつが来る」
「え?あ、あいつ?」


携帯の画面を見た会長は、小さく舌打ちをした後、俺でもわかるくらいにあからさまに顔を顰めた。


「前川宗太、お前は今すぐそこの仮眠室に入れ。そして入ったら絶対に声を出すな」
「は、はい!」


まだ状況を理解出来てない俺は、とりあえず会長に言われるまま仮眠室に入り、急いで中から鍵をかける、と同時に、生徒会室のドアが勢いよく開かれ、「竜二ーー!!」と仮眠室のドアを挟んでも頭に響く大きな声が生徒会室に木霊した。


なるほど、あのうるさい足音は花ノ下か。


しかしよく見ると、────花ノ下は相変わらずのアホ面なのだが、生徒会役員の顔色はどうも優れないように見えた。そして会長を見た瞬間に、その青い顔がより一層青くなった。


····うん、なるほど、会長に会いたくなかったんだな。
そりゃそうだろう。生徒会の仕事をほっぽり出して自分は男のケツ追っかけ回してるんだもんな。

なんて1人で納得していると、会長がまるで今気づきましたというような顔で、大きくため息をついた。



「···花ノ下くん。今は確か、6限目の最中だと思うのだが」
「さっきまで叔父さんに呼ばれてたんだ!それに俺は、授業を受けなくても賢いからな!そういう竜二こそ、今ここにいるじゃないか!サボりはいけないんだぞ!!」



仮眠室の窓からこっそり様子を伺うと、先ほどの花ノ下の言葉が癇に触ったか、どことなく、握りしめている右手に血管が浮き出ている気がする。


「はは、確かにそうだ。でも、····どうしてか私以外の役員が出席しなくてね、仕事が思うように進まないんだ」


“どうしてか”が何となく強調された言葉に、花ノ下の後ろにいる役員達が居心地の悪そうな顔をする。しかし会長はそんな役員達にニッコリと笑顔を向け、話を続ける。


「そこにいるのは副会長に書記、会計だな。庶務は別の所にいるらしいが·····君達、何でここにいるんだ?」


会長の声は確実に低くなってるが、表情は相変わらず綺麗な笑顔のままで、それが逆にこの空間の威圧感を倍にしている。
役員達の顔はもう我慢の限界だ、と根をあげそうになっているのが分かるほど真っ青になっていた。
それに比べ、花ノ下はキョトンとしたアホ面を晒していて、これはもう尊敬するレベル。


「····べ、別になんでもいいでしょう!姫、もう行きましょう!」
「ちょ、ちょっ!陸斗!」


副会長がキャンキャンと吠えたかと思うと、ふんっと鼻を鳴らし花ノ下の腕を掴んで生徒会室を出ていった。他の役員も慌ててそれになる続き、+αの面々もここぞとばかりに出ていった。

うん、こいつらほんと何しに来たの?




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