部屋 T





「───────で、なんで広海はここにいるの?」
「だからさっきも言ったじゃん。俺、宗太の所で泊まるから」


部屋に向かう俺の横を素知らぬ顔でついてくる広海に、あれは本気だったのかと深いため息がでる。


「いや普通に考えて無理だし。心配してくれてるのはそりゃあ嬉しいけど····いいよべつ」
「は?心配とかじゃないし。ていうか急いで、早くしないとアイツ帰ってくるよ?」
「それはゴメンだね!急ごっか!」


有無を言わさない広海の視線に耐えきれず早足になる。
···なんとなく話をずらされた気がするが、こいつがすると言ったら何を言っても聞かないのは知ってるので、すぐに妥協してしまう。

···寝るところは、まあ、どうにかなるだろう。多分。
とにかく今は疲れた体を早く休めたい。広海のことは···その後にでも考えよう。


「あー···やっと着いた。やっぱ無駄に広いよな」
「おじゃまします」


玄関を見る限り、花ノ下はまだ帰ってきていない。そのことにとりあえずほっと胸をなでおろし、広海を連れ急いで自室に入る。


「うむ。お前がどうやってここに寝泊まりするつもりかは分からんが、とにかく俺は今猛烈に風呂に入りたいから····とりあえずここで待っといて」


絶対なんにもさわんじゃねーぞ!フリじゃねーからな!としつこく言い聞かせ、はいはいとウザそうに返事をする広海を自室に待たせ風呂場に向かう。

バッ!と一気に服を脱ぎ、シャワーを浴びて体を洗い、どういう原理でずっと温まっているのかはしらないがすごく快適な温度の湯船に勢いよく入った。


「はぁー·········」


肩まで風呂に浸かると、一日分の疲れが熱で溶かされるような気分になる。
今日一日、色々なことがありすぎて体がずっと緊張状態だったからか、体が少しピリピリする。

体もあったまりうとうととし始めた頃、突然風呂のドアが開いた。


「ねえ、遅いんだけど」
「うひぇッ?!」


バシャッ


突然の来訪者に驚き足···いや、この場合は腰?を滑らせて顔面まで湯船に浸かってしまう。


「ぷはっ、な、なんだよ突然!」
「いやだから、遅いって言ってんじゃん」
「だだだだ、だからって風呂入ってくんなよ!!」
「···えっ、なに?もしかして照れてんの?キッモ···」
「理不尽!俺だって年頃の男なんだから羞恥心くらいあるわ!! 」


男同士だよ?という広海に、男同士も変わらない!と怒鳴って手を伸ばしてドアを無理やり閉める。


「もう上がるから!部屋で待ってろ!」
「はいはい」


足音が遠のいてから、大きくため息をつく。

今日一日でこの疲労。
······俺、ほんとにここでやってけんのかなあ········。




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