再来 IV




「なんでだよ!別にいいだろッ!」
「っ痛、」


俺が席を立った事をよく思わなかったのか、花ノ下が俺の手を強く握り、肌に爪がくい込んだ。


「姫」


すると、今までずっと黙ってた赤い髪の男が、俺の手を掴む花ノ下の手をそっと掴み、何かを咎めるように顔を歪ませた。


「何すんだよ牙介ッ!! 」
「·····そんな奴に触るな、汚れる。」


その赤髪の男はちらりと俺を見ると、すぐに眉を顰めてふい、と目線をずらした。
···おおう、なんなんだいったい。···俺の気のせいじゃなければ、もしかして俺を助けてくれた?

·······まさかなあ!そんなわけないよなあ!


「ねぇ、もうほんとに邪魔だからさあ···出ていくなら早く出ていって?」
「···じゃ、ま···」


嫌そうに顔を顰めながら席についた会計と書記が、口を揃えて俺を罵倒する。
まあまあ、そんなお綺麗な顔を歪ませて···もったいない。


「はいはい今すぐ出ていきますよ···」


俺は席で頬杖をつく広海の方へ向き直し、未だに爽やかと睨み合う高見くんの頭をコツく。


「終わった?早く出よう」
「俺まだハンバーグ全部食べてないのにー···」
「俺の金なんだからいいだろ!早く行くぞ!」


いつのまにか人が集まってきていたことに今気づく。チラホラひそひそと話す声も聞こえる。これは本格的にいけない状況だ。

言い表せない居心地の悪さを感じながら、俺達はスタコラサッサと食堂を後にした。







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