新しい友達 U



「つ、ついたーー!!」


あれから早五分。俺は今トイレの前に立っている。

ここまでの道のりは、それはそれは長かった。
そして俺は俺が重度の方向音痴であることを知った。なぜこんなクソデカイ校舎にトイレが3つしかないんだ?ここの生徒はみんなオムツでも付けてんのか?そりゃすげえや!


「って、あれ···?なんかある?」


さっさとトイレに入ろうとすると、足元の異物に躓く。言っすり下に視線を向けると、そこには


「ま、まじか···!!」


人が倒れてました。


服を見る限り、どうやらここの生徒らしい。
それにしても、なぜトイレで倒れるんだ。···というか先ほどから聞こえる空気の抜けるような音はなんなんだ?まるで空腹のときの···まさか


「あのー···」


俺は倒れている男にポケットにいれていたカロリーメイトを近づけた。
すると次の瞬間、倒れていたやつはガバッと起き上がり俺の手からカロリーメイトを奪い取った。


「すげえ食いつき···」


男は俺に見向きもせず一心不乱にカロリーメイトを貪る。見る限り同い年っぽい。こいつ本当に空腹で倒れてたんだな。


「倒れるほど腹減ってたならなんで食堂に行かなかったんだよ」
「んぐ、···ふう、ご馳走様!···え?ああ、いやぁね、食堂行こうにもカードなくしちゃってさーこれが失くすの3回目なんだよ。しかもさー!新しいの貰った次の日に失くしちゃったから、先生に言いにくて!だから二日位空腹でも大丈夫かなって思ってー」


「それがこの様だよ」と言って男はケラケラと笑いながらフラフラと揺らつきながら立ち上がった。

いや、普通に考えてなんでそんな立て続けにカード無くすの?もう首らぶら下げとけよ。ちなみに俺はよく財布を首からぶら下げてたぞ。


「っと、」
「わ、···まだ栄養足りてないんじゃない?俺、今から食堂行くから俺の奢りで···って言ってもあんまり高いもんは無理だけど、それでいいなら来る?」
「え!まじで?!」
「まじまじ」
「行く行く!」


パアッと顔を輝かせた男の顔を見ていると、そういえば俺はここに用を足しに来たんだという事をと思い出す。


···なんか、出る気配がない。


「···じゃあ、まあ、行くかぁ···」
「おう!」



広海を待たせたら何をしでかすかわからないので、釈然としない気持ちのまま空腹男と一緒に広海との待ち合わせ場所に急いだ。







prev next

top
main


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -