不覚にも泣いてしまった。
長男は俺を優しく抱き締める。
さっきまであんなに怖かったのに何故かとても安心した。


「無理させてごめん」

「なに、が」

「女にとって初めてって大事なんでしょ」

「俺は、女じゃない」

長男はやれやれといった様子で俺の頭を撫でた。


「それでも今は女」

「お前だってここからでたいんだろ?」

「うん、でも、考えが変わったよ」

「まさか諦めるとか言うんじゃないだろうな?」

「いいや、ゆっくり進めていくことにした。まずはキスから」

ゆっくり長男の顔が近付いてきて、額にキスをされた。
思わず身体が強張るが優しい仕草に緊張がとけていく。

額、頬、瞼、といろんな所にキスをされ、次は…というところで耳元で囁かれる。


「ロア」


心臓が跳ねた。なんで名前なんかで呼ぶんだ。


「な、んだ…よ」

「俺のことも名前で呼んでよ」

「は、ぁ…?」

「まずはそこから、はじめよう?」

「…い、…るみ」

よくできました。と柔らかいナニが俺の唇に触れた。
キスをされたらしい。


「ロア、まだ怖い?」

「べ、つに」

「ならよかった」

そしてその夜俺たちは、何度も何度もキスをした。




(溶けてしまうかと思った)


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