「ん…っ」
あー、今日もいい朝だな、こんな日は朝餉は粥がいい。
ググッと伸びるとガチャッと鉄がぶつかる音がした。
横を見ると、目を開いたままの男がいた。
「うわあああああっ!!!!」
「うるさ」
「お、お、お前!!!なんで、ここにっ…て、あぁ…」
そうだった。
俺は昨日騙されてこんな国に連れてこられてこいつと許婚にされ挙げ句の果てにはこの部屋に閉じ込められたんだった。
「寝ぼけてる時もうるさいんだね」
「あ?」
なんだこの嫌味な野郎。
昨日はちょっと優しいとこがあると見直したのに、いや本当にちょっとだ。小指の爪ぐらい。
やっぱムカつく。
イライラとした俺が起き上がった瞬間部屋中にクラッカーの音が鳴り響いた。
「パッパパーラー!ハイ!ロア、イルミ君!」
あの頑丈な扉を軽々開けて親父とシルバさんが登場した。
クソ親父は嬉しそうにクラッカーやタンバリンをシャンシャンしている。
うぜぇ。
「な、て、てめぇ!何しにっ」
「目標達成!」
「は?」
「イルミ君とちゅーしたでしょ?今回はそれが目標だったんだ!こんなに早く解決するとは思わなかったけど!」
は、なんで、こいつ知って
「なんで知ってるかって?その手錠にはチップが埋め込まれてて二人が唇をくっつけたら知らせが来るようになってるんだよーーん!」
バキィッと親父に拳を叩き込む。
この野郎、本気で殺す。
「痛いじゃないか!」
「てめぇ、よくも男とはいえ女の姿になった一人娘を男に差し出したな?」
「のんのん!ロアは女の子!それに昨日だってあれ以上進んでたら流石の私も止めていたよ」
「嘘を言うな、俺が止めていなかったらすぐに怒鳴り込んで行っていたくせに」
やれやれと呆れるシルバさんは鍵を取り出す。どうやら俺とイルミの手錠をはずしてくれるらしい。
「この手錠をはずせばお前らは自由だ、しかしその代わり許婚を認めることが条件としてある。どうする?」
せっかくこの部屋からでるチャンスだ。
でもこいつと許婚にならなければいけない。
でも自由になれる。
でも
「うん、いいよ」
イルミはそそくさと鍵をとりガチャリと自分の手錠をはずした。
「なっ!てめぇ!何勝手に決めてやがる!」
「ロアだってこの部屋から出たいんだろ?利害の一致だよ」
「だからってなんで許婚なんかにっ」
「うるさいな、はい」
抵抗する間も無く腕をとられガチャリと手錠をはずされた。
あぁこれで後戻りはできなくなった。
「よかったよかった!これでめでたしだね!」
「行っておくがまた何か揉め事を起こしたら問答無用でこの部屋に叩き込むからな、覚えておけ」
俺にとっての死刑宣告が聞こえた。
(あぁ、無常)
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