眠りに落ちたイヴをベットに運び優しく髪を撫でる。

あぁ、まるで白雪姫のようじゃないか。

美しくて、哀れなお姫様。

王子なんていないのに。


そっと唇を重ねると瞼がうっすらと開いて漆黒の瞳が僕を映す。


あぁ、どうして

キミは僕のキスなんかで目覚めちゃいけないのに。


その細い首筋に手をかけて思い切り力を入れる。イヴは苦しいのか目を見開いて涙を溢す。


その溢れた涙さえも僕は美しいと思ってしまうんだ。



「愛してる…、…愛してるんだ…っ」



側から見れば僕は狂っているのだろう。

愛してると言いながら愛しい人を、自分の妹をこの手で殺すのだ。

でも、

僕のモノにならないならいっそ


いっそこの手で



『ドラコ』


まだ彼女が妹だと知らなかった頃、純粋に彼女を愛してた頃に向けられた彼女の笑顔が脳裏に浮かぶ。


「…っ、…く…」


どうして

どうして

涙が次々と溢れ出て彼女の頬に落ちていく。


どうして僕等は兄妹なんだ?

どうして血が繋がってる?


こんなにもキミを、

愛 し て い る の に 。


力を緩めればイヴが酸素を求めて僕の手をゆるりと押して咳き込む。

漆黒の瞳は僕を見ながらみるみるうちに濡れていく。

するりと冷たい色白な手が僕の頬に伸びてそっと耳元でイヴが少し掠れた声で囁いた。


「私も、…愛してる」

見開かれた僕の瞳から溢れる涙が漆黒の瞳から溢れる涙と共にシーツにシミを作った。

冷たい手に乱暴に自分の指を組ませると荒々しくキスをする、どちらのモノかわからない涙がしょっぱかった。






いつか罪に呑まれても
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