俺、流される。


店に近付くにつれて心臓がどんどん煩くなってきやがる。なんだってんだ?今日は走ってもいねぇのに。まぁ、コレを渡すだけだ、耐えろフィンクス。
お、店が見えた、…なって、痛ぇ!
心臓が痛ぇ…っなんだこれ、なんかの病気か?まさかな、気のせいだ気のせい。よし、開けるぞ。


ーーカランコローン

「いらっしゃいませ!」
「…お、おう」


今日は…ちゃんとカウンターに居たな、いつもは花の影とかにいるからよくわかんねぇが今日はちゃんと見つけた。

「あ!フィンクスさん!」
「…っ、おう」
名前、覚えてたんだな、まぁ…当たり前か、昨日の今日だもんな。
それでもシュリさんが俺の名前を呼んでくれたことが無性に嬉しかった。

「あー、その、昨日はいきなり帰って悪かった…、それに本来なら俺が礼すべきだった。その詫びとして」
箱をシュリさんに渡すとシュリさんは困惑したようにオロオロと俺と箱を交互に見つめる。
「えっと…これは?」
「そこの角のケーキ屋で買ってきた、甘いもの、平気だったか?」
「はい!大好きです!開けてもいいですか?」
「おう」

シュリさんは箱を開けると大きな琥珀色の瞳をキラキラさせて満面の笑みを浮かべた。

「私此処のお店のケーキ大好きなんです!嬉しい!ありがとうございますフィンクスさん!」
「いや、これはハンカチの礼だからシュリさんが俺に礼を言うことねぇよ」
「苺タルトとシュークリームパイ、ちょうどよかった!お茶にしようと思ってたんです、フィンクスさんも一緒に如何ですか?」
「や、俺は…」
「じゃあ中庭に行きましょう」

有無を言わさずシュリさんは俺を中庭に連れて行った。
何故か俺はシュリさんには逆らえねぇ。


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