俺、耐える。


ーーカララン

「「いらっしゃいませー!」」

店に入れば客から視線が集まる、店員は教育されてるのか慣れてるのか特に反応はねぇ。

ーーえー?何?…
ーダメだってーーークスクスーー…
ーーー可愛いー男の人がーーーーー…

店内のあちらこちらから聞こえてくる女独特の声色にグラリと頭が揺れる。
甘く見てたぜ…普段団長にパシられてプリンを買いに出掛けても店に入るのはいつも夜だった、確かに笑われたり好奇の視線を集める事はあったがコレ程じゃねぇ。
ダラダラと冷たい汗が流れる、マズいな…早く決めねぇと。

並ぶケーキに目を向けてもどれが人気でどれが美味いのかなんてサッパリだ。

「お客様?」
「…ぉ、おお…此処の人気商品はなんだ?」
「はい、今ですと季節限定品『春風の悪戯』と『お姫様の我が儘』が大変人気ですね」
「は…春、か…の…い、…戯とおひ、め様の…我が儘…?」
「『春風の悪戯』と『お姫様の我が儘』です」

畜生!また一つ難題が起きやがった!この店員は何を言ってやがる!春風の悪戯!?お姫様の我が儘!?

何 だ そ れ !!!

こっちはケーキの種類を聞いてるっうのに何でヘンテコリンな言葉を言ってくるんだ!?あれか!?暗号か何かか!?合い言葉でもあんのか!?
いや待てよ前に女共が喋ってたぞ?
『ただのケーキでも可愛く名前つけちゃうと可愛くなるよねー』
これか!
つまりこのヘンテコリンな合い言葉は変にリメイクされたケーキの種類だな?

「あー…その、春風のなんとかとなんとかの我が儘つーのは…どういうケーキなんだ?」
「はい、どちらも旬の苺をたっぷり贅沢に使った商品で、春風の悪戯はこの春にとれた小麦粉で作った生地に甘く上品な味わいの苺を沢山載せた苺タルトでお姫様の我が儘はルルカリノア王国にしか生息していない鳥の卵で作ったカスタードクリームと苺の甘酸っぱいクリームで仕上げたシュークリームパイです」
よしただの苺タルトとシュークリームだな、待てよシュリさんはどっちが好きだ?これは悩んでもわかんねぇだろ、面倒だ両方買っちまえ。

「じゃあそれ一つずつくれ」
「かしこまりました!」


とりあえず、手土産はクリアしたな。


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