俺、逃げる。


ーーゴトッ

箱が床に落ちた音が耳に届く、が、俺は動けなかった。
体が動かねぇ、視線を女から逸らせねぇ。

「お客様、大丈夫ですか!?」

女はパタパタと俺に駆け寄り落ちてるプリンの箱を拾った。

「中身大丈夫でしょうか?お客様?あ、大変!ずぶ濡れですね」

女はグシャグシャになった箱を心配そうに見つめ、ずぶ濡れの俺に気付くとエプロンのポケットからハンカチを出して俺を拭いた。

ーーードクンッ!

「うおおおお!」

「きゃっ!?」

女が俺に触れた瞬間、全身に電流が走ったような衝撃が流れた。
俺の本能が告げる、ここに居ちゃならねぇ、今すぐ逃げろ!
俺は女からプリンの箱を奪い取ると土砂降りの中、店から逃げ出した。


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