はじめまして、どなた?



フェイタンは久し振りにアジトへ足を運んだ。

次の盗みにはフェイタンも呼ばれていたし、アジトに保管している拷問器具のいくつかを補充するつもりだった。

アジトに入るといつもと何かが違った。

いつもは荒れ果てた廃墟内には割れたガラスや釘などが散らばっていたが、今日はそれが全て無くなっている。


小綺麗になったと言えばいいのだろうか?


あまり気にせず、自分の拷問部屋に向かおうとすると一つの部屋の違和感に気付いた。


その部屋は空き部屋のはずだ。


しかし今、その部屋からは団員ではない何者かの気配がする。


侵入者、か?


フェイタンは殺気立ち、ドアを勢いよく開けた。


瞬間、

視界が白に染まった。



「…………なんね、此処」



部屋は廃墟とは思えないくらい綺麗にされていた。
白を基調とし、レースやフリルがふんだんに使われ天蓋付きのベットなどが置かれている。


まるで御伽話の世界のようだった。



フェイタンは混乱した。
団員にこんな趣味の輩はいない。ヒソカがいくら変態でもこんな部屋には住まないだろう。


新しい団員か?


しかし自分にはそんな連絡は来てないし、今団員の数は欠けていない。


部屋に鳴り響くオールゴールの音にフェイタンはふと自分とその部屋の不釣り合いさに居心地の悪さを覚え、眉を潜めた。


カタッ


ベットから音が聞こえた。
フェイタンはカーテンに手を掛け、バッと一気に開けた。


中には白銀のモノがいた。


キョトンした表情でこちらを見ている。
白銀の瞳につい吸い込まれそうになるのを抑え、フェイタンは白銀を冷静に観察した。


容姿から見て年齢は3、4歳ぐらいか?白に銀が混ざった腰まである髪からピョコリと耳がはえている。

人間の耳ではない。


真っ白なその四肢に、首にはダイヤが散りばめられた首輪がある。
ゆらゆらと動いてるモノは白銀の尻尾らしい。



「……お前、なんね」

毒気が抜かれていたが、まだ得体の知れない白銀を睨み付けるように目を細めた。



「…?に。」

コテンと首を傾げ不思議そうに此方を見ている白銀に、悪意は無さそうに見えた。



――きゅんっ


気が付くとフェイタンは白銀の頭を撫でていた。



「あ!フェイ!」

シャルナークが声を荒げて部屋に入って来た。

「駄目だよアネモネの部屋に勝手に入ったらー、団長に怒られるのは俺なんだからさ」

ぷりぷり怒ってるシャルナークを横目に、フェイタンはアネモネを膝の上に乗せた。


「お前、アネモネ言うか」

「にぃ」

「私、フェイタンよ」

「ふぇー、た?」


アネモネの頭を撫でながら、フェイタンは自分がのめり込んでゆくのを感じた。


prev next