見掛けで判断してはいけません。



「アネモネ、ほら、動かないの」

「うー、」

アネモネは今、シャルナークに髪をとかしてもらっていた。
いつもならクロロの特権だが、今クロロは仕事のためアジトにはいない。

そのため、ジャンケンで見事に勝利したシャルナークが嬉々とアネモネの髪をとかしているのだ。

だが、アネモネははやく遊び回りたいらしくキョロキョロと動いたりし、なかなか終わらず手間取っているのだ。


「おー、相変わらずやってんなぁ」

「お?団長はどうしたぁ?」

「ウボォー!ノブナガ!」


二人の姿を見ればアネモネはベリル族特有の身体能力でシャルナークからパッと離れて、二人に飛び付いた。



「あー!アネモネ、駄目だってば、こっち来なよ!」

「もー、や!」


ぷりぷりと怒りながらシャルナークが連れ戻そうと追えば、アネモネはウボォーギンの巨体の影へと隠れる。


「いいじゃねぇかシャル、髪なんてとかさなくたって死にやしねぇって!」

ウボォーが笑いながら言えば、シャルナークは不服そうに顔を歪めた。


「そういう訳にはいかないよ、アネモネの髪は団長の努力の賜物なんだから、ちょっとでも絡んだりすると団長が癇癪起こしちゃう」

「とか言ってお前がとかしたいだけだろ、ほら、アネモネ、アイス買って来たぞ!」

「やったー!ありがとうノブナガ!」


アネモネは満面の笑みでギュッとノブナガに抱き付いた。


「おいコラ、独り占めすんな。今回は俺も金出したぞ」

ウボォーギンは不満げな表情を浮かべ、ガルルルと獣のようにノブナガを威嚇した。


「ウボォー、ありがとうっ」

「おう、なんてこたぁねぇ!溶けちまう前にさっさと食え!」


が、アネモネが抱き付けば表情を一気にデレデレと緩めた。


「うん!」

アネモネがニコニコしながら箱からアイスを取りだし、食べようとした瞬間、横から筋肉質な腕がヒョイとアイスを奪った。


「ちょっと、困るよ二人共!アネモネはもう今日のおやつは食べたんだ!」


シャルナークはアネモネが届かないようにアイスを高く上げた。


「あー!」

アネモネは悲しげな声をあげ、恨めしそうにシャルナークを見つめた。


「そんな顔してもダーメ!さっきのおやつだってフェイとフィンとマチから三人の分貰ってたよね?知らなかったから俺も俺の分あげちゃったし!完全にカロリーオーバーだよ!」


シャルナークが上にあげたアイスの箱をまた腕がヒョイと奪った。


「いいじゃねぇかシャル、これぐらいどぉって事ねぇって!」

「あ!ウボォー!困るよ!」


ウボォーギンはシャルナークから匿うようにアネモネを自分の後ろにやり、アイスを食べさせた。


「ウボォー、大好き!」

ふわりとアネモネの笑顔を見て、ウボォーはさらに顔が緩まるのを感じた。


「シャル、よく考えろ。アイスでアネモネの笑顔が見れて大好き!まで言われるんだぜ?いくらお前が怒ってもコレは譲らねぇ」

フフンと笑いながらキッパリと言ったウボォーに対抗するようにシャルナークが叫んだ。


「なら二人はアネモネが太ってもいいんだね!?こんなに可愛いアネモネが片手で持てないぐらい太ってもいいんだね!?」

「おう、女はふっくらしてるほうが良いだろ」

「あぁ、よく食う女は良い女だ。食いっぷりに惚れちまう」


ガハハッと笑い合う強化系二人にシャルナークは頭を抱えた。


「………アネモネ、食べ過ぎだよ…」

シャルナークの弱々しい訴えにアネモネはシュンとし、猫耳と尻尾を垂らす。


「食べ過ぎ食べ過ぎって、いったいどんくらい食ったんだよ?」

「ケーキ2個分だよ」

「そんくらいヘッチャラだっての!俺なんか一口で終わっちまう」

「………ケーキ、ホールで2個分だよ…」


「」
「」


二人が言葉を無くしてアネモネを見ると、ちょうど全てのアイスを平らげたアネモネが幸せそうに微笑んでいた。


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