▽ 気付いた時には手遅れに
店内は想像してたよりもピンクでレースとフリルで溢れていた。
「すごいね…」
ハリーが店内を見回しながらボソリと小さく囁いた。
「男の子には辛い?」
「そんなことないよ、楽しい。それにサラにこの店はピッタリだ」
クスクスと笑いながら二人でカップル専用ジュースのストローに同時に口を付ける。典型的なハート型になってるストローをちゅーちゅーと吸いながらまた二人は笑った。ハリーのエメラルドグリーンの瞳とサラのヴァイオレットの瞳が見つめ合う。
「ハリーの瞳ってとても綺麗な色ね」
「サラこそ、珍しくて綺麗なヴァイオレットだ」
「あら失礼ね。これはライラック色よ。ライラック家に生まれた者は皆この色なの」
「これは失礼、ライラック様」
サラの気取った口調に合わせてハリーもとぼけた口調で返せばお互いに吹き出して笑った。
サラは自分が久しぶりに心から笑ってるのに気付いた。ハリーといると楽しいのだ。ハリーはとても優しくて少し口下手だけど一生懸命話してくれるしスリザリン生達とは違って自慢も悪口も言わない。彼から出てくるのは親友のロンやハーマイオニーやグリフィンドールの楽しそうな温かい話ばかりだ。
マダムの店を出るとサラの好きなお店の前を通ったため少し見たいとマントから出て雑貨を眺める。
その時急に腕を掴まれた。
「やぁ、サラ」
レイブンクローのランドールとその取り巻き達だ。ランドールは一つ上の先輩でサラが入学した頃からしつこく付きまとっている男だ。告白こそしてこないが顔を見れば絡んでくる。サラは正直このガラの悪い先輩が大嫌いだった。
「一人なの?俺と回ろうよ」
肩に腕を回され不快感でいっぱいになる。いつもはドラコ達が追い払ってくれるが今日一緒にいるのはハリーだ。口下手なハリーがこの先輩に何か言えるはずがない。
「やめて下さい、サラは僕の彼女です」
サラの予想とは反対にランドールとサラの間にハリーが割り込んできた。
きっぱりとしたハリーの口調と睨むエメラルドの瞳にランドールはバツがわるそうにサラから手を離し「行こうぜ」と取り巻きを連れてその場から去って行った。
「大丈夫?」
振り向いたハリーにドクリッとまた鼓動が高まる。
あぁ、私、本当にハリーを好きになってしまったんだ。
サラは真っ赤になりながらもありがとうとハリーの両手をギュッと握った。
今度はハリーが赤くなった。
「でも、ごめん。彼女って言っちゃった…」
「ううん、いいよ。大丈夫だから」
ホグズミートからホグワーツへの帰り道。二人はマントも被らず手を繋いでいつものヤドリギの下へ帰る。
「今日とても楽しかった、本当よ。とっても楽しかったわ」
ふわりと微笑むサラにハリーも嬉しそうに微笑み、ギュッとサラを抱き締めた。
「…ハリー?」
「ごめん、あまりにも可愛かったから」
照れ隠しにそっぽを向くハリーを見てサラは心臓がキュッとなるのを感じた。
「あと、これ…」
ハリーはそっとサラの手のひらに隠していたモノを乗せた。
「…ブレスレット?」
手のひらに乗せられたのはパープルとピンクのビーズで所々に花が散りばめられてる可愛らしいブレスレットだ。
「サラのイメージにピッタリだったから。今日の記念に」
サラはブレスレットを手首につけるとギュッとまたハリーに抱き付いた。
「ありがとう、嬉しい」
「よかった、喜んでもらえて」
さぁっと夜風が流れヤドリギがさわさわと揺れる。
「ねぇ、ハリー、ヤドリギの下に男の子と女の子がいる時って」
サラが言い終わる前にサラの唇にハリーはそっとキスをした。
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